受傷時期を推定する新手法

 死亡した人が生前に傷を受けた時期を、科学的に推定する新しい方法を確立したとして、県警科学捜査研究所(科捜研)の八木洋一法医係長(43)が医学博士の学位を取得し、警察庁長官賞詞を受賞した。従来は受傷後「7日前後」か否かしか科学的に推定できなかったが、新手法では「1~5日程度」の判断が可能。死亡者が虐待など日常的な暴力を受けていた場合に、殴打された時期をより正確に立証することなどが期待される。

 八木係長は22日、県警本部で國枝治男本部長に受賞を報告した。

 八木係長は、人が傷を受けてから1~5日程度の間だけ、損傷部位を治すために集まる好中球やマクロファージなどの「炎症細胞」に着目。それに付着したタンパク質「CD14」を染色し、数や割合などを観察することで、受傷時期を絞り込むことに成功した。

 これまでは別の物質を観察することで「傷ができて7日前後」との判定はできたが、「1~5日程度」前の傷かどうかを推定するのは医師の見立てに頼るしかなかったという。

 八木係長は「科学的な推定方法を確立したことで、(暴力を受けた時期などの)証拠価値が高まり、裁判でより強固な立証につながる」と意義を語った。

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