佐世保市大宮町の岩永浩気(ひろき)さん(66)は、キリスト教三大巡礼地の一つ、スペインの「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」を目指す約720キロの「巡礼の道」を踏破した。「きつかったが、貴重な体験ができた。多くの人に伝えたい」と語る。
会社を退職し、セカンドライフを楽しんでいた5年前、中学時代の同級生から「巡礼の道」を歩いた話を聞いた。興味が湧き、60代のうちに挑戦しようと決意。昨年9月に実行した。
巡礼の道はいくつかルートがある。岩永さんが選んだのは、スペイン北部を横断する道。このルートは世界遺産に登録されており、世界中から多くの巡礼者が集まるという。
9月3日にスペインのパンプローナをスタートした。初日から標高千メートル以上の峠を越える厳しい道のり。20キロほど歩いて宿にたどり着いたときには、すでに足が痛かった。「この調子で本当にたどり着けるのか…」。不安を抱きながらも、翌日からも休むことなく、1日約25キロのペースで歩き続けた。
夜は、巡礼者専用の宿泊施設「アルベルゲ」で体を休めた。数キロおきにあり、1泊千円ほどと安い。二段ベッドがいくつも並んだ部屋で、男女関係なく寝泊まりする。
歩くペースが同じ巡礼者とは、宿泊場所も何度も同じになる。次第に仲良くなり、食事を一緒にすることもあった。連絡先を交換し、今も交流が続いている人もいるという。
仲間と励まし合いながら歩き続け、9月30日、サンティアゴ・デ・コンポステーラにたどり着いた。「達成感でいっぱいだった。60代でもできるんだという自信にもなった」
巡礼の道を歩く目的は人それぞれだ。岩永さんは巡礼者と話す中で、人生に何かしらの課題を抱え、その回答を求めている人が多いように感じたという。「自分にも悩みがあり、解決の糸口を見つけたかった」
1カ月近くもひたすらに歩いていると、普段は考えないことが頭に浮かんだ。人生を振り返り、過去の失敗を認め、心が浄化された気分にもなった。「全てが解決したわけではない。でも、歩いてよかった」と晴れやかに語った。
スペイン“巡礼”720キロ踏破 66歳 岩永さん
- Published
- 2020/02/21 00:02 (JST)
- Updated
- 2020/02/21 15:07 (JST)
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