自粛ムードで花見客まばら いつもと違う光景に驚き

桜の下で花見を楽しむ人たち。空きスペースが目立った=長崎市、風頭公園

 新型コロナウイルスの感染が広がる中、長崎県内も花見のシーズンを迎えた。桜の開花宣言後、初の日曜日となった29日、長崎市内の花見スポットは空きスペースが目立ち、人影もまばらで自粛ムードが漂う。例年、多くの家族連れらでにぎわう公園各所を歩いた。
 晴天となった同日午前、三分咲きの立山公園。毎年訪れている同市片淵4丁目の男性(67)は「これほど場所取りが楽だったことはない」。いつもと違う光景に驚きながらレジャーシートを広げた。
 開催予定だった「立山公園さくらまつり」は感染防止のため中止。露店や、ぼんぼりの点灯もやめた。実行委員会の井村啓造会長(73)によると、例年は10日間の期間中、約5万人が訪れるが「今年は10分の1以下だろう。多くの人に見てほしかったので残念」と肩を落とした。
 全国で日に日に増える感染者。他県では外出自粛も広がっているが、それでも桜は人を引き寄せる。同市の酒井豊四郎さん(84)と喜子さん(83)夫妻は、つえをつきながら公園内を散策。「桜の季節になるとやっぱり見たい。今年も2人で見られてよかった」と笑顔で顔を見合わせた。
 午後の風頭公園。山登りサークルの仲間と来ていた末継儀明さん(77)は「桜の季節を楽しまないともったいない。屋外なので大丈夫かなと思った」と話す。桜を写真に収めていた男性(74)は仲間約20人と予定していた花見を中止したが「楽しんでいる人を見るとうらやましく思うね」。
 一方、稲佐山公園には多くの親子連れらの姿があった。福岡県から長崎市の実家に帰省中の渋谷綾子さん(41)は「外で遊ぶ機会が減り、子どもにストレスがたまっている。思い切り遊ばせたい」と話した。複数の人が異口同音に語り、満開の桜の下、マスク姿でバドミントンなどを楽しんでいた。

 


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