佐世保と安全保障 水陸機動団発足2年<下> 新たな懸念 即応性の実現 “視界不良”

米海兵隊との実動訓練「アイアン・フィスト」中に、米軍のオスプレイで上陸した陸自水陸機動団の隊員(水陸機動団提供)

 離島防衛を主な任務とする陸上自衛隊水陸機動団にとって、即応性は重要となる。しかし「空の足」として一体運用される輸送機オスプレイの配備や、恒常的な訓練場所の確保といった課題をめぐり懸念も生じている。
 「苦渋の決断だった」。千葉県木更津市の市議はこう打ち明ける。昨年5月。原田憲治防衛副大臣(当時)は市に対し、陸自木更津駐屯地にオスプレイを暫定配備する方針を説明した。
 防衛省はオスプレイ17機を米国から購入。機動団の団本部がある相浦駐屯地と約60キロと近い佐賀空港(佐賀市)への恒久的な配備を目指している。2018年8月、佐賀県は受け入れを表明。しかし県と漁協との調整は難航している。
 木更津への暫定配備は「開始から5年以内を目標」とする条件付きだった。市は今年2月に防衛省と合意。早ければ6~7月に木更津駐屯地に暫定配備される見通しだ。
 なぜ相浦駐屯地と約1200キロも離れた木更津駐屯地が選ばれたのか。防衛省は▽運用に必要な滑走路長(約1500メートル)がある▽17機を配置する地積がある-といった条件を満たす自衛隊基地の中で、相浦駐屯地まで最も近いことを理由に挙げる。元防衛省幹部は「オスプレイは速度が速い。(相浦駐屯地まで)2時間程度かかるが問題はない」と見解を示す。一方で「オスプレイ来るな いらない住民の会」(木更津市)の野中晃事務局長は「木更津駐屯地はオスプレイ専用の基地になるのではないか」と危機感を強める。
 暫定配備が始まれば、オスプレイが相浦駐屯地に飛来する可能性が出てくる。陸自は「具体的な訓練計画は決まっていない」とする。しかし機動団の存在には好意的な地元住民も、オスプレイを使った訓練に対する反応は未知数だ。相浦地区自治協議会の山口久雄さん(69)は「騒音など町民から不安の声は出るかもしれない」と話した。

 即応性を磨くための恒常的な訓練場所の確保も“視界不良”だ。県内では五島、南島原の2市で水陸両用車を使った海からの上陸訓練をしているが、佐世保市内では実現していない。機動団は「(現状は)関係者から十分な理解が得られていない」としている。
 日本大の吉富望教授(安全保障・危機管理)は「即応性を求められているので、訓練は近隣が好ましい。自治体は市民と自衛隊の潤滑油のような存在になることを期待したい」と述べた。

 


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