職員感染 病院名は公表すべき? 問い合わせ殺到もクラスター予防に

 不特定多数の人が集まる病院の職員が、新型コロナウイルスに感染した場合、病院名を公表すべきかどうか。感染が確認された諫早市の60代女性が勤務する和仁会病院(長崎市)は2日、県が病院名を非公表とする中、ホームページ(HP)で自ら名乗り出た。周辺住民からは特定されたことで安心する声が聞かれる一方、病院には問い合わせが殺到しており、対応の難しさが浮き彫りとなった。
 「ウイルスに感染した人が、通院している病院の職員だったら…。クラスター(感染者の集団)が発生したら怖くて行けない」。1日に感染が確認された60代女性と同じ諫早市に住む80歳の男性は、病院名が公表されず困っていた。だが2日午後に通院中の病院ではないと分かり、「安心して通える」と胸をなで下ろしたという。
 和仁会病院と県によると、感染した女性は職員の教育担当で患者との接点はない。濃厚接触者とされる同僚4人も同様に患者との接点はないという。また女性の家族1人は同病院に入院。女性は見舞いに家族の病室を訪れる程度で、他の患者と接することはなかったという。
 中田勝己・県福祉保健部長は1日の感染発表時に病院名を公表しなかった理由について「最終確認は取れていなかったが、1日の時点で多くの人が感染するとは考えられなかった。しっかりと(行動歴や濃厚接触者を)確認してから公表すべきかどうか判断したかった」と説明。結果的に同僚4人と家族1人の計5人はPCR検査で陰性だったため、県はその後も公表する予定はなかったという。ただ中田部長は「クラスターが発生して不特定多数の人に感染リスクがある場合、予防策を取ってもらう手段として公表はあり得る」と付け加えた。
 一方、和仁会病院は患者に安心してもらおうとHPで、職員4人は自宅待機、家族は個室隔離とし、保健所の指導に従い患者の療養に支障がないよう努めることも明記した。だが「通院しても大丈夫か」「薬は処方してもらえるのか」などの問い合わせが推計300件超寄せられ、中には苦情もあった。退院したがっている患者もいるという。また職員の家族や子どもには職場や学童保育に来ないよう求められた人も。病院の担当者は「感染者を出した立場なので、何も申し上げられない」と申し訳なさそうに話した。

 


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