難関「長崎検定1級」合格の松尾さん 越中先生への恩返し

越中さん(左)に長崎検定1級合格を笑顔で報告する松尾さん=長崎市内

 旧長崎歴史文化協会の元協力委員で長崎市職員の松尾憲和さん(51)=同市鍛冶屋町=は、理事長の郷土史家越中哲也さん(98)が高齢になり同協会の活動終了が内定した2年前、「恩返しをしたい」と一念発起。長崎の歴史文化について高度な知識レベルを問う長崎歴史文化観光検定(長崎商工会議所主催、通称・長崎検定)1級の合格を目指し猛勉強した結果、2回目の受験となった第15回検定(今年3月に結果発表)で難関を突破した。
 長崎検定は、県民の意識向上や観光ガイド育成を目的に年1回実施。現在は長崎、東京の2会場で試験がある。基本レベルの3級とやや高度な2級の試験は2006年にスタート。
 1級は知識に加え、長崎の魅力を発信でき次世代への語り継ぎやガイドができるレベルとされ、08年から試験が始まった。記述式で合格には8割以上の正解が必要。かなりの難関で、第15回検定は受験した計33人のうち合格は3人。1級合格者は08年から12年間で計47人。
 松尾さんは現在、市スポーツ振興課係長。39歳のとき長崎くんちについて知りたいと考え、長崎歴史文化協会の扉をたたいた。同協会は、長崎学研究や後進の指導を目的にした民間団体。市役所に程近い同市桶屋町に事務所があり、昼休みに足しげく通って越中さんの話を聞いてきた。「郷土誌や専門書に載らないくんちの裏話が聞けて、楽しかった」と振り返る。
 18年に同協会の活動終了が決まり、秋の長崎くんちの頃「越中先生に感謝を表すため、何かできることはないか」と考えた。同協会には長崎検定1級合格者がおらず、19年3月の同協会解散時に勇退する越中さんを喜ばせられればと受験を思い立った。
 それまでに宅地建物取引士、日本ソムリエ協会ワインエキスパートといった資格を取得していて「合格の自信があった」。しかし19年2月実施の第14回検定は不合格に。肩を落として越中さんに報告すると「来年も受けなさい」と背中を押された。以来、平日は出勤前と帰宅後の計3時間、土、日曜は図書館で終日勉強に励んできた。
 1級合格発表後の今月1日、同市内で越中さんに会って報告。越中さんは「1級合格はびっくりした。長崎の地方史をよっぽど勉強しないと上がらない」と喜び、「長崎学研究を継いでほしい」と語った。
 松尾さんは「昨年は不合格で心が折れそうになったが、恩返ししたい気持ちが勉強を支えた。合格できて良かった」と笑顔。5年ほど前から「長崎さるく」のボランティアガイドを務めていて「より幅広いガイドができるように知識を役立てたい」と話している。

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