食事、洗濯、送り迎え… 保護者も「区切りの夏」 長崎県高校野球大会

試合を終えた選手に拍手を送る保護者ら=佐世保市総合グラウンド野球場

 朝昼晩の大盛りのご飯、洗濯、送り迎えに出費。学業や親元を離れた生活への心配…。スポーツをやる子を支える親の毎日も慌ただしい。3年生の選手に限らず、保護者にとっても、この夏は特別だ。コロナ禍で相次いで大会が中止になった中、無事に見ることができたラストプレー。鳴り物や大声もない、拍手だけのスタンドだが、そこにはこれまでの、これからのわが子たちへの、さまざまな思いが詰まっている。
 2年連続で平戸と合同で挑んだ猶興館。3年生は3人で、小中高ずっと一緒だった。遊撃の佐々木慶士の父、雅也さんは小学時代のコーチを務めたこともあって「小さいころからの積み重ねをアピールできるのは将来の財産。少ない人数でも腐らずに頑張ってきたから」と大会開催に感謝した。
 チームは昨年の雪辱を果たして、見事に初戦を突破。「いつも通り、のびのび楽しそうにプレーするのを、できるだけ長く見ていたい」
 五島海陽の主将、松本大夢は4人きょうだいの末っ子。母の敏枝さんは長年の日々を思い出しながら「やっと終わり。ホッとするけど、正直、さみしい」。敗れたものの、昨夏Vの海星を相手に攻守で活躍し、ユニホームを土で茶色にした息子。仲間を引っ張ってスタンドへ「ありがとうございました」と一礼する姿に、母は「感無量。最後にしっかり洗わないと」と球場を後にした。
 同じく船で応援に来た五島のスタンド。なかなか均衡が破れない展開に「ぎばれ!どがんかせれ」。“怒りマーク”もあしらわれた手作りのボードを試合の流れに応じて掲げ、無言ながらも懸命にエールを送った。
 地元島原から大村工に進んだ中堅の大島恵太は、甲子園を夢見て下宿生活で鍛錬を重ねた。母の亜紀さんは「片付けもできなかった子が何でも自分でするようになった」。卒業後は県外に就職予定。父の稔史さんは「精神的に強くなった。これからも仲間を大切に成長してほしい」と2回戦へ進んだ息子を見守った。
 十人十色の家族物語が、確かにそこにはあった。

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