親友同士は似たような話し方をする、と気づいたことがあるだろうか。
それは動物でも同じだ。小鳥のコガラだろうと類人猿のチンパンジーだろうと、多くの種は、自分の音声が親しい仲間と似るように微調整し、より距離が縮まることがわかっている。
ところが、6月7日付けの学術誌「カレントバイオロジー」に発表された論文によれば、西オーストラリアのシャークベイに暮らすオスのハンドウイルカで、正反対の現象が示された。(参考記事:「動物大図鑑:ハンドウイルカ」)
この海域では何十年にもわたって調査が続けられており、メス同士は血縁個体からなる群れを形成する。その一方で、オス同士は血縁関係のない2、3頭の小さな群れ(同盟)を形成することがわかっている。
オスの同盟は、メスを見つけ、繁殖を成功させるのに役立っている。また、同盟には階層があり、小さな同盟がいくつも集まって大きな同盟がつくられ、時にそれはイルカの生涯にわたって持続する。(参考記事:「イルカの記憶力、20年前の仲間を認識」)
ハンドウイルカには、シグネチャーホイッスルと呼ばれる自分だけの音声がある。人間で言えば名前のようなものだ。そして今回の研究で、同じ同盟に属するオスは同じ「名前」を持たず、音声が似るように微調整もしていないらしいことが明らかになった。(参考記事:「人間の声をまねるシロイルカを初確認」)
「個体毎の音声ラベル、言い換えると『名前』は、彼らが複雑な社会関係を育むのに役立っています」と、研究を率いたステファニー・キング氏は言う。同氏は西オーストラリア大学の研究員であり、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもある。(参考記事:「イルカと話せる日は来るか」)
こうしたオス同士の絆はとても強く、彼らは胸びれで互いをよく愛撫する。ドローン空撮では、まるで手をつなぐかのようにして、オスの胸びれの上に他のオスが自分の胸びれを重ねて泳ぐ姿も撮影された。
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