NASAが初の民間宇宙飛行の乗員決定、日程は未定

米国にとって待望の「自力」有人宇宙飛行はいつ実現するか

2018.08.07
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【動画】ISSで生まれるイノベーション
国際宇宙ステーションで行われている研究は、地球上での生活にとって貴重な情報や画期的な発見をもたらしている。(解説は英語です)

 米国の宇宙船スペースシャトルが最後に飛び立ったのは、2011年7月8日のこと。以後7年間、NASAは米国の宇宙飛行士を国際宇宙ステーション(ISS)へ送り届けるために、高額な代金を支払ってロシアのソユーズ宇宙船を利用してきた。(参考記事:「【動画】潜入ルポ、ソ連のスペースシャトル」

 この状況を打開するため、NASAは2014年、米ボーイング社と米スペースX社に、スペースシャトルの後継となる宇宙船の製造を依頼した。そしてこのたび、その最初の乗組員たちの氏名が発表された。

2つの民間宇宙船

 ジョンソン宇宙センターで行われた記者会見において、NASAのジム・ブライデンスタイン長官は、ボーイング社の宇宙船「CST-100スターライナー」およびスペースX社の「クルー・ドラゴン」による最初の4回の有人飛行に搭乗する宇宙飛行士9人を発表した。

「これはわが国にとって重大なできごとです」。ブライデンスタイン氏は、記者会見のスピーチでそう述べている。「わたしたちはこれから、米国人の宇宙飛行士を、米国製のロケットで、米国の大地から空へ送り出していきます」(参考記事:「トランプ大統領が目指す「宇宙軍」は実現する?」

 ボーイング社の最初の試験飛行に搭乗する乗組員は、エリック・ボー氏、ニコル・オーナプー・マン氏、クリス・ファーガソン氏だ。

 現在ボーイング社の社員であるファーガソン氏は、1998年から2011年までNASAの宇宙飛行士として働いた実績を持つ。ボー氏もNASAのベテラン宇宙飛行士で、2013年にNASAの宇宙飛行士の一員となったマン氏は今回の試験飛行が初の宇宙飛行となる。「人生でまたとない機会です。テストパイロットとして、これ以上の喜びはありません」とマン氏は言う。

 スペースX社の試験飛行に搭乗するのは、NASAの宇宙飛行士であるダグ・ハーリー氏とボブ・ベンケン氏だ。両者とも2000年にNASAの宇宙飛行士となり、ふたり合わせて4回のスペースシャトル・ミッションにおいて58日間以上の宇宙飛行経験を持つ。(参考記事:「地球から最も遠くへ行った人物は?」

 記者会見の場で、スペースX社の社長兼最高執行責任者であるグウィン・ショットウェル氏は以下のように述べている。「スペースX社の7000人の社員は、この計画に参加できること、そして皆さんを宇宙に送り出すことを大変な名誉と考えています。われわれはこの事業に本気で取り組んでおり、皆さんを失望させることはありません」

NASAが必死になる理由

 今回の発表は、2014年以降、ボーイング社とスペースX社に68億ドルを投資して進めてきたNASAの民間宇宙飛行計画にとって大きな節目だ。クルーを発表したことには、宇宙飛行士たちをそう遠くない未来に宇宙へ送り出せるというNASAの自信が見て取れる。(参考記事:「億万長者たちの宇宙開発競争 勝つのは誰?」

 NASAが必死になるのには理由がある。米会計監査院は、ISSの宇宙飛行士をロシアの宇宙船で地球に帰還させるのは、2019年11月のフライトが最後になると述べている。それ以降、NASAは地球の低軌道に人を送り込む確実な手段を失うことになる。

ギャラリー:廃墟?遺産?ソ連の「スペースシャトル」 写真11点(画像クリックでギャラリーページへ)
ギャラリー:廃墟?遺産?ソ連の「スペースシャトル」 写真11点(画像クリックでギャラリーページへ)
(PHOTOGRAPH BY RALPH MIREBS)

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