南極の棚氷に大きな亀裂、巨大氷山が分離へ

成長する二つの亀裂、いつ交わるかは不明

2019.03.28
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南極のブラント棚氷付近で海氷の上に立つコウテイペンギンたち。(PHOTOGRAPH BY STUART HOLROYD, ALAMY STOCK PHOTO)
南極のブラント棚氷付近で海氷の上に立つコウテイペンギンたち。(PHOTOGRAPH BY STUART HOLROYD, ALAMY STOCK PHOTO)
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 南極のブラント棚氷から、巨大な氷の塊が分離しそうな状況だ。東京23区を三つ合わせたほどの広さがある氷山が、いつ誕生しても不思議ではないという。

 この棚氷には大きな亀裂が2つあり、ここ数年間でどちらも少しずつ伸びている。最終的に2つの割れ目がつながれば、面積約1700平方キロメートル、高さ約150メートルという氷山が海に浮かぶことになる。やがて氷山は解けて世界の海水量が増えることになる。(参考記事:「南極で海氷拡大、主因は棚氷の融解?」

 棚氷の分離は驚くべきことではない。南極大陸から舌のように海にせり出すブラント棚氷は、かねてから注意深く観測されてきた。英国の南極研究所が研究活動の拠点、ハリー研究基地をそこに置いているからだ。だが、いつ氷山が分離するのかは、誰にもわからない。(参考記事:「巨大氷山が分離、ナショジオの地図で見る南極の変化」

 これまでも棚氷が分離し、巨大氷山が誕生した例はある。特に大きかったのは、2017年のラーセンC棚氷の分離だ。その面積は約5800平方キロで、今回できるであろう氷山の3倍以上の面積だ。(参考記事:「南極に出現した真四角な氷山、どうやってできた?」

JOHN KAPPLER, NG STAFF
JOHN KAPPLER, NG STAFF
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 ただし、ここ数年間に南極半島で見られた大規模な分離とは違い、今回生まれる氷山は温暖化による気温や海水温の上昇が原因というわけではなさそうだ。

「南極半島では大きく分離した棚氷がいくつかありますが、ブラント棚氷はそれらよりかなり南にあります」と語るのは、英国南極研究所の氷雪学者オリバー・マーシュ氏だ。ブラント棚氷の付近も気温は上昇しているが、氷山を分離させるほど大きな影響を与えてはいないという。「今回の氷山誕生は、自然のサイクルの一部です」と同氏は述べる。(参考記事:「南極で巨大氷山の誕生を目撃、山手線内側のほぼ倍」

次ページ:亀裂は1週間に数百メートルのペースで伸びている

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