気候変動の影響はいたるところで表れ始めている。上昇する海水温。崩落する氷床。それが国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の最新レポート「海洋と雪氷圏の気候変動に関する特別報告書(SROCC)」が明らかにした現実だ。
9月25日に公開された900ページに及ぶレポートは、数千もの研究結果をまとめ、地球の海と氷にすでに現れている影響を描き出し、将来何が起こるかを予測している。
気候変動はもはや仮定の話ではなく、現実の問題となっていることを科学は証明している。人間の活動による地球温暖化のために、海、極地の氷冠、高山の氷河はすでに限界近くまで熱を吸収しており、人間が依存しているシステムそのものが崩壊の危機にさらされている。
例えば、ヨーロッパアルプスの最高峰モンブランのイタリア側にあるプランパンシュー氷河は、いつ崩壊が始まってもおかしくない状態にある。このため道路は閉鎖され、近隣の施設には退去命令が出された。
海では漁場が移動して漁獲が落ち込んだところが増え、数万ドル規模の漁業ビジネスから個人操業の漁師までを圧迫している。海洋熱波の発生回数は、わずか30年前と比べて2倍に増加した。地球の人口の27%が住む沿岸地域は、海面上昇と巨大化した嵐の脅威にさらされている。
そして「世界の給水塔」である高山の氷河や氷原に依存する多くの人々は、ひどくなる一方の洪水や干ばつに苦しめられている。
各国が温室効果ガスの排出を抑えるために直ちに対策を講じなければ、状況は悪化するばかりだ。しかし、強い決断力と行動力によって最悪のシナリオを回避することはまだ可能であると、レポートは主張する。(参考記事:「地球温暖化、目標達成に残された道はギャンブル」)
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