自分がリスになったと想像してみよう。そのリスが洞窟を見つけた。中は広々として快適そうだ。だが、2頭の大きなクマが先に入っていくのが見えた。数分後、1頭が出てきた。洞窟は今、自分にとって安全だろうか。これは、多くの動物が日々直面する計算問題だ。
敵を避ける時だけではない。恋人探しや餌探し、移動する時まで、数を理解する能力は様々な問題解決に役立つ。
ドイツ、テュービンゲン大学の神経生物学者アンドレアス・ニーダー氏は、動物の「数える」能力を研究したあらゆる過去の論文を集めて分析した結果、ハチ、鳥、オオカミなど多くの動物たちが、数を理解して、それを基に行動していることを明らかにした。これは、動物なりの数を数える行為であると言える。研究成果は3月30日付けの学術誌「Trends in Ecology and Evolution」に発表された。
論文では、この能力が動物たちの生き残りに役立つことも示唆された。動物の認知能力に関する研究は近年急速に進んでいるが、今回の研究によって、またひとつ新たな知見が加わった。
「数というと、高度に発達した数学的能力や天才というイメージに結び付けられやすいためか、人間特有の能力だと考えられてきました。けれどニーダー氏の研究は、基本的な数える能力が動物の世界でもかなり広範囲に見られ、生存に有利な能力であることを示しています」と、英クイーン・メアリー大学の行動生態学者ラース・チッカ氏は語る。氏は、今回の研究には参加していない。
ほぼすべての動物が持つ能力
ニーダー氏は、様々な動物たちが数をどのように理解しているかを調べるため、関連する150本以上の論文を調べた。結果、「ほぼすべての種に、数に関する能力が備わっている」と結論付けた。
そして当然のことながら、この能力は餌探しに最もよく発揮されるという。
例えば、チョウセンスズガエル(Bombina orientalis)を使った実験では、カエルがおおよその数の違いを理解できるという結論が出された。カエルの餌であるミールワームの幼虫を数匹ずつひとかたまりにして与えたところ、3匹のかたまりと4匹のかたまりでは違いが気にならないようだったが、3匹と6匹、または4匹と8匹のかたまりを同時に与えられた時には、決まって数が多い方のかたまりを選んでいた。
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