ライオン進化の歴史を解明、絶滅種をゲノム解析で

絶滅したホラアナライオン、バーバリーライオンなど20頭を調査

2020.05.09
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
朝日を浴びながら草むらを歩くアフリカライオン。タンザニアで撮影。(PHOTOGRAPH BY MELISSA GROO, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
朝日を浴びながら草むらを歩くアフリカライオン。タンザニアで撮影。(PHOTOGRAPH BY MELISSA GROO, NAT GEO IMAGE COLLECTION)
[画像のクリックで拡大表示]

 今から3万年前、ライオン(Panthera leo)はさまざまな亜種に分かれ、4つの大陸に広がって生きていた。なかでもホラアナライオンはよく繁栄し、現在のスペインからユーラシア大陸を横断し、北米のアラスカやユーコンまで分布していた。その姿は先史時代の洞窟壁画に広く描かれている。

 一方、アメリカライオンは、現生のアフリカライオンや絶滅したサーベルタイガーより大きく、北米全域とおそらく南米の一部にすんでいた。(参考記事:「絶滅動物サーベルタイガー、驚きの暮らしが判明」

 他にもアフリカ、中東、インドに多様な大きさや外見のライオンが生息していたが、大半がすでに絶滅している。しかし、科学者たちは遺伝学的な手掛かりを集め、絶滅したライオンたちに新たな光を投げ掛けるとともに、絶滅の危機にある現生ライオンへの理解を深めようとしている。

 アフリカライオンの個体数は過去150年間で20分の1以下に減り、現在は2万5000頭を下回っている。主な要因は狩猟と生息地の喪失だ。また、インドライオンはインドに約600頭が残るのみとなっている。

 残されたライオンを守るとともに、過去にいた多様なライオンたちの関係をより深く理解するため、科学者の国際チームがライオン20頭の全ゲノム配列を決定した。そのうち14頭はすでに絶滅したライオンで、カナダとロシアの永久凍土に保存されていた3万年前のホラアナライオン2頭も含まれる。(参考記事:「シベリアで氷河期の絶滅ライオン見つかる」

 5月4日付けで学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」に発表された論文によると、ホラアナライオンは他の種類のライオンと交配していなかった。また、インドライオンは約7万年前に祖先から分岐したことがわかった。この論文では他にも、ライオンの進化の秘密が解き明かされている。

 著者の一人であるデンマーク、コペンハーゲン大学の遺伝学者ロス・バーネット氏は、「過去をのぞき込んで未来を知る」論文だと表現する。「現生のライオンだけを調べても、物語の全貌を知ることはできません」

次ページ:アフリカを出て世界へ進出

ここから先は、「ナショナル ジオグラフィック日本版」の
会員*のみ、ご利用いただけます。

会員* はログイン

*会員:年間購読、電子版月ぎめ、
 日経読者割引サービスをご利用中の方、ならびにWeb無料会員になります。

おすすめ関連書籍

PHOTO ARK 動物の箱舟

絶滅から動物を守る撮影プロジェクト

世界の動物園・保護施設で飼育されている生物をすべて一人で撮影しようという壮大な挑戦!

定価:3,960円(税込)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加