今から3万年前、ライオン(Panthera leo)はさまざまな亜種に分かれ、4つの大陸に広がって生きていた。なかでもホラアナライオンはよく繁栄し、現在のスペインからユーラシア大陸を横断し、北米のアラスカやユーコンまで分布していた。その姿は先史時代の洞窟壁画に広く描かれている。
一方、アメリカライオンは、現生のアフリカライオンや絶滅したサーベルタイガーより大きく、北米全域とおそらく南米の一部にすんでいた。(参考記事:「絶滅動物サーベルタイガー、驚きの暮らしが判明」)
他にもアフリカ、中東、インドに多様な大きさや外見のライオンが生息していたが、大半がすでに絶滅している。しかし、科学者たちは遺伝学的な手掛かりを集め、絶滅したライオンたちに新たな光を投げ掛けるとともに、絶滅の危機にある現生ライオンへの理解を深めようとしている。
アフリカライオンの個体数は過去150年間で20分の1以下に減り、現在は2万5000頭を下回っている。主な要因は狩猟と生息地の喪失だ。また、インドライオンはインドに約600頭が残るのみとなっている。
残されたライオンを守るとともに、過去にいた多様なライオンたちの関係をより深く理解するため、科学者の国際チームがライオン20頭の全ゲノム配列を決定した。そのうち14頭はすでに絶滅したライオンで、カナダとロシアの永久凍土に保存されていた3万年前のホラアナライオン2頭も含まれる。(参考記事:「シベリアで氷河期の絶滅ライオン見つかる」)
5月4日付けで学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」に発表された論文によると、ホラアナライオンは他の種類のライオンと交配していなかった。また、インドライオンは約7万年前に祖先から分岐したことがわかった。この論文では他にも、ライオンの進化の秘密が解き明かされている。
著者の一人であるデンマーク、コペンハーゲン大学の遺伝学者ロス・バーネット氏は、「過去をのぞき込んで未来を知る」論文だと表現する。「現生のライオンだけを調べても、物語の全貌を知ることはできません」
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