新型コロナが「スーパー抗原」の可能性、一部が細菌毒素に酷似

他のコロナにはない強烈な炎症を起こしうる特徴、子どもの重症化に関与か

2020.10.20
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患者から分離された新型コロナウイルス粒子の透過電子顕微鏡写真。CDCの新たな報告書は、21歳未満の致死的なCOVID-19症例を分析。その大半は、小児多臓器炎症症候群(MIS-C)と呼ばれる症状に由来していた。(Image by NIAID)
患者から分離された新型コロナウイルス粒子の透過電子顕微鏡写真。CDCの新たな報告書は、21歳未満の致死的なCOVID-19症例を分析。その大半は、小児多臓器炎症症候群(MIS-C)と呼ばれる症状に由来していた。(Image by NIAID)
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 2020年2月以降、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した米国の子どもは74万1000人におよぶ。

 幸いなことに、その大半は比較的症状が軽く、また感染した子どもの16〜45%は無症状とも言われる。一方で、このグループ(21歳未満)の子どもたちは、「小児多臓器炎症症候群(MIS-C)」と呼ばれる重篤な疾患を発症することがある。

 MIS-Cの初期症状には、発熱、発疹、腹痛、下痢、嘔吐などが含まれる。急ピッチで進められた数カ月におよぶ研究のおかげで、当初は原因がわからなかったさまざまな症状を、明確な疾患として特定できるようになった。

 MIS-Cはまれな病気ではあるものの、数時間のうちに重度の炎症に発展し、ときには命に関わることもある。米国疾病対策センター(CDC)は、21歳未満のコロナウイルスによる死亡例を分析し、その大半がMIS-Cによると9月に報告した。これまでに米国で確認されたMIS-Cの症例は1097件で、死亡例は20件にのぼる。

「MIS-Cは発症が極めて急速で症状が重いため、患者の70%が集中治療室に入ることになります」。計662人のMIS-Cの症例に関する複数の論文を網羅的に分析した結果を、9月に学術誌「EClinicalMedicine」に発表した米テキサス大学の研究医アルバロ・モレイラ氏はそう述べている。

 MIS-Cの初期段階については明らかになりつつあるものの、真の有病率や長期的な経過など、わからないことはまだたくさんある。MIS-Cは通常、咳、体の痛み、鼻水といった、典型的な新型コロナウイルス感染症の症状が現れてから数週間後に発症する。また複数の研究によると、無症状感染後に発症する場合もあるという。

「それがMIS-Cの恐ろしいところです」と、モレイラ氏は言う。「自分の子どもがCOVID-19にかかっていることを親も知らないうちに、MIS-Cを発症することもあるのです」

 また幾つかの研究では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、気管からいなくなった後でも、消化器系で複製を続けることがわかっている。特に子どもの場合はその傾向が顕著だ。

「データは、ウイルスが便の中に最大1カ月潜んでいることを示しています」と、香港中文大学医学院腸内細菌叢研究所のシュウ・ウン氏は言う。「これは、COVID-19が単なる呼吸器系疾患ではないことを示しています」

次ページ:のどや鼻で消えても腸に潜伏

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