エボラ拡大止まらず、世界の対応に警鐘

2014.09.04
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先週、防護服に身を包み、リベリアの首都モンロビアにある病院内の高リスク区域から出る医療スタッフ。西アフリカ全域で猛威をふるっているエボラ・ウイルスだが、なかでも最も影響が深刻なリベリアでは、今年に入って確認された死者は624人、感染者は972人に上っている。

Photograph by Dominique Faget/AFP/Getty
 エボラ出血熱を封じ込める戦いについて、勝算はあると公衆衛生当局は言う。しかし今週に入って、複数の団体や専門家が、西アフリカでの流行に向けた世界の対応が不十分であり、危機を解決できない可能性があると、そろって警鐘を鳴らしている。 リベリアとシエラレオネでは制御不能な勢いで感染が広がっている。感染地域はナイジェリアのラゴスを超えて拡大し、8月29日にはセネガルでも初の感染者が見つかった。西アフリカで感染者が確認されたのはこれで5カ国目だ。

 世界保健機関(WHO)のチャン事務局長と、国連でエボラ熱対策を担当するナバロ調整官は、2日に記者会見を開き、アメリカ、イギリス、ウガンダ、南アフリカなどの国々の取り組みを称える一方で、世界各国のさらなる支援が求められると述べた。

 両者によると、問題の根源には、訓練を受けたボランティアが不足していることがあるという。

「国外の医療チームの支援がなければ、問題の大きさに見合った対応を取ることは極めて困難だ」と、WHOのマーガレット・チャン(Margaret Chan)事務局長は述べている。「国外の医療チームの数は全く足りていない状況だ」。

 WHOの福田敬二事務局長補によれば、1つの医療センターで80人のエボラ患者の看護にあたるには200~250人の医療スタッフが必要だという。このほか、患者を医療センターに搬送する、遺体を埋葬する、感染を食い止めるために患者と接触のあった人を探すといった諸々の作業のための人員も必要になる。

「流行がさらに拡大すれば、国を超えて患者の看護にあたる数千人の人材が必要になると見込まれる」と福田氏は話す。「決まった数というわけではなく、流行の規模次第で必要な人数は多くも少なくもなる」。

◆燃えつきるのを待っているわけにはいかない

 国境なき医師団(MSF)のジョアン・リュー(Joanne Liu)会長は2日、国連に対し、行動を起こさないことで世界はエボラとの戦いに敗れつつあると語った。

「各国のリーダーは、この国境を超えた脅威の実態を把握できていない」とリュー氏は言う。「蔓延国を切り捨て、流行が自然に燃えつきるのを待っているわけにはいかないのだ。この火を消すには、燃えさかる建物へ突入していかなければならない」。

 先週WHOが発表したエボラ対策に向けた詳細な計画は、書類上はすばらしいものだが、行動を起こさないかぎり現場の現実を変えることはできない、とリュー氏は言う。必要なのは、患者の看護にあたるための十分な訓練を受けた知識豊富なスタッフと、感染の疑いのある人を見つけ出し隔離するための緻密な疫学調査だ。

 米国疾病予防管理センター(CDC)も、今週になって、エボラの感染を食い止めるためのより積極的な国際対応を呼びかけた。エボラの影響が深刻な西アフリカ諸国の視察から帰国したばかりのCDCのトム・フリーデン(Tom Frieden)所長は、2日に行われた記者会見で、現地の医療従事者の活動を称え、世界各国のリーダーに対しさらなる支援を求めた。

「世界の全てのリーダーに、私が目にしたものを見てもらうことができたら」とフリーデン氏は言う。「この大流行を食い止めることは1国だけでできるものではない。一刻も早く、世界各国が連携して西アフリカの支援にあたることが必要だ。それが、ひいては私達全員の安全につながることになる」。

Photograph by Dominique Faget/AFP/Getty

文=Karen Weintraub

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