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起業家候補の支援、経産省が「基礎研究から補助金」の狙い

経済産業省は、有力な技術シーズにより起業を目指す人材への支援を強化する。大学や企業で基礎研究などに取り組み、起業を視野に入れる研究者らを対象に、試作開発や技術実証など事業化に必要な資金を補助する。創業前は成長軌道に乗ったスタートアップと比べ、民間からの資金調達が難しい。創業前の起業家候補人材の支援を手厚くし、有力なスタートアップの創出につなげる。

事業化を目指す起業家候補人材を対象に、研究に必要な費用を補助するほか、起業経験者やベンチャーキャピタル(VC)などによる事業計画の策定支援など、スタートアップの立ち上げに必要な各種支援策を提供する。2019年度補正予算に約30億円を計上した。

補助額は1件当たり500万円程度、支援期間は6カ月程度を想定する。経産省は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)や関係省庁などと連携し、大学やVC、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)に協力を呼びかけるなどし、有望な技術シーズを持つ起業家候補人材を発掘する考えだ。

日本は米国や中国と比較し、特に創業前の起業家候補人材への支援が少ない。「ギャップファンド」と呼ばれる研究と事業化の間を埋める資金を提供するのは民間にとってリスクが高いからだ。

このため有力な技術シーズを持ちながら、資金調達が困難で事業化まで至らないケースがある。有力なスタートアップが生まれにくい課題につながっている。経産省は以前からNEDOを通じて起業家候補人材の支援を進めてきたが、こうした課題を踏まえ、スタートアップが創出しやすい環境整備に向け支援を本格化する。

日本は諸外国と比べて開業率が低い。政府は産業競争力を高めるため、イノベーションの担い手であるスタートアップなどの起業支援を強化している。企業価値または時価総額が10億ドル以上の未上場や上場ベンチャーを23年までに20社創出する計画を掲げる。未上場ベンチャーへの出資に対し税負担を軽減する「オープン・イノベーション促進税制」の創設を決めている。

日刊工業新聞2020年2月12日

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