ニュースイッチ

“ウィズコロナ”の観光産業、こんな時こそ企画力で地方創生

日本旅行社長・堀坂明弘氏

―新型コロナウイルス感染症の影響をどう見ていますか。

「ビジネス、観光すべてが止まった。コロナが突きつけたのは、従来の旅行業では、人の動きが止まると収入がなくなるという現実だ。日本旅行は“観光振興企業”を掲げ、地方のツーリズム(人的交流)を促進する。旅行商品を作って提供する企画力を生かして、省庁や自治体に地方創生策を提案したい」

―移動の自粛が全面解除された6月19日以降の旅行需要回復は。

「自治体独自の宿泊補助制度に相当な反響がある。消費者の旅行意欲は強く、県をまたいだ動きにも手応えを感じている。(旗艦店の)TiS大阪支店では有馬とか(近郊)だけでなく(南紀)白浜や、夏休みの沖縄にも需要があり、再開は先だが、海外旅行への相談も発生している。売り上げのベースは、まだまだ前年比2―3割程度だが、7月、8月と月を追うごとに回復が相当進みそうだ」

日本旅行社長・堀坂明弘氏

―JR西日本系の旅行会社として、グループでの取り組みは

「10月からJRグループの大型キャンペーン“せとうち広島DC(デスティネーションキャンペーン)”が始まる。(官民一体の需要喚起策)GoToトラベル効果も期待できる時期だ。JR西は観光型MaaS(統合型移動サービス)“setowa(セトワ)”を開発しており、当社も1月にMaaS事業推進本部を立ち上げた。食やアクティビティーの面で連携し、セトワを進化させる。この取り組みを標準化して他エリアにも展開したい」

―業界団体の日本旅行業協会(JATA)では訪日旅行担当の副会長を務めています。

「こういう時だからこそ、人の交流が必要だ。日本の若い人たちが海外の人との交流に挑戦しないと、国際競争から取り残されてしまう。感染状況を踏まえながら、旅行業界と経済界とが足並みをそろえて、徐々に(国際間の移動を)再開していくことが大事だ。コロナ後の訪日旅行は、人数だけでなく品質を上げて消費額を重視すべきだ。地方の隅々まで訪れて頂き、長期滞在して地方の産品を消費してもらう形にしていかないとならない」(月曜日に掲載)

【記者の目/MaaSの収益化に期待】
 しばらく国内旅行に軸足を置かざるを得ない状況だ。JR系旅行会社は営業エリアへの送客や地域コンテンツの磨き上げも重要な役目。観光型MaaSは旅行業のノウハウが大いに役立つはずだが、どう収益に結びつけられるかは、答えが見つからない。セトワを通じて、ビジネスモデル確立の糸口を発見してほしい。(小林広幸)

編集部のおすすめ