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「得」より「徳」を大事にする社長の働きやすい職場作り

IoTでプロセス見える化

西島(愛知県豊橋市、西島豊社長、0532・88・5511)は、自動車関連や産業機械部品の専用工作機械メーカー。定年がない家族的な雰囲気を持つ会社で、女性が働きやすい環境づくりにも力を入れる。社是である「一流の製品は一流の人格から」を体現する3代目の西島社長に、人材育成や「アフターコロナ」のモノづくりについて聞いた。

―新型コロナウイルスの影響で、働き方は変わりましたか。

「専用工作機械は足が長く、半年ベースで仕事を持っている。秋以降は不透明だが、今は忙しい。顧客のために工場は止められないが、社員の感染リスクもある。そこで1日7時間の2交代制を導入した」

―自社一貫生産の専用機生産で交代制は難しいのでは。

「専用機は人が交わり、切磋琢磨(せっさたくま)しながら匠(たくみ)が作り上げる。ライン生産ではないから交代制は難しいが、人の命がかかっている。これまで8時間プラス残業で対応していた仕事を7時間でやるのは大変だ。一つひとつ課題を解決し、一部は以前より生産性が上がった。社員に時間意識が芽生えたことも大きい。当たり前だったことが制約され、あらためて必要性や、やり方を見直す機会になった。アフターコロナには検証に基づいたニューノーマル(新常態)ができる」

―注力したい分野はありますか。

「2交代制で情報共有が難しい中、設備の稼働状況が1分1秒まで見えるIoT(モノのインターネット)が役立った。まず社内導入し、今後は製品に展開していく。これまで感覚的だったプロセスを見える化し、アフターコロナの武器にしていく。受発注から生産管理まで一元管理することで原価予測や経営予測が可能になる」

―女性の活躍を推進しています。

「大事なのは女性管理職の数でなく、働きやすくやりがいを感じられる環境づくり。すでにコンピューター利用製造(CAM)システムの担当は8人全員が女性。覚え方をマニュアル化した。CAMは作りだめができるから、1日数時間でも都合のよい時間に来て働いてくれればいい。設計のうち、いくつかは専門の設計者でなくてもできる。女性に任せれば従来の設計者の負担が減り、女性も活躍でき、全体の生産性も高まって三方良しだ」

西島社長は「経営者として迷ったら目先の損得でなく、自分の心の中にある善悪で判断する」と信念を貫く。新型コロナでトイレットペーパーが小売店で品薄状態になった時には社員に会社の備蓄品を配り、マスクは社員の家族が手作りした。「得」より「徳」を重視する姿勢こそ、アフターコロナにおける企業の強みとなるのではないか。家族のような社員の負担軽減のため、利用拡大を進めるIoTや自動化の進展にも注目される。

(名古屋・田中弥生)
日刊工業新聞2020年7月9日

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