大腸がんでは、ステージⅡ以上の直腸がんに補助放射線療法を行うことがあります。結腸がんの多くは腺がんで、放射線はあまり効きませんが、直腸では扁平上皮がんが多く、放射線が効果を発揮しやすいのです。
照射のタイミングによって「術前」「術中」「術後」照射に分かれます。
すでに確立された治療であるため、治療ガイドラインの初版(2005年)から最新版(19年)まで、内容はあまり変わっていません。ただ第3版(10年)までは大ざっぱな記述のみでしたが、第4版(14年)以降は詳しいコメントやエビデンスが載るようになり、現在に至っています。
術前照射は、腫瘍を縮小させることで手術を容易にすることと、肛門をできる限り温存することを目的として行われます。最新版によれば「肛門括約筋温存率と切除率の向上が得られることが示唆される」と書かれており、一定の効果があるようです。ただし術後の生存率まで改善するかというと、現時点では「エビデンスは存在しない」と記されています。また、放射線障害による後遺症も少なからずあるようです。
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永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。