衝撃「落札率100%」 飯塚市発注工事入札<中>職員「なめられている」 福岡県
福岡県飯塚市発注の工事の入札で、「落札率100%」が発生したのは今年が初めてではない。2013~15年度にも毎年4、5件起きている。なぜ続発するのか。
ある市職員は、こう解説した。「市は合併特例債が使えるうちに大型公共工事を発注する。供給量が多くなったことが要因の一つ。100%というのは、行政がなめられている証拠だ」
合併特例債-。建設事業の95%に充当でき、返済額の70%を国が負担する地方債で、少額の自己資金で大規模な事業が行えるのが特徴だ。飯塚市は、1市4町の合併から15年後となる2020年度末に発行期限を迎える。
同市は合併特例債を活用して本庁舎(事業費約97億円)や複数の小中一貫校を含む学校整備(同289億円)などの工事を次々と進めてきた。倉智敦市財政課長は「今後予定されている大型事業は公民館や体育館で、来年までがピーク。その後の発注額は減っていく」と話す。
筑豊地区の自治体には、過去に国の優遇措置が切れた後の地域経済の冷え込みという共通体験がある。「石炭六法」だ。炭鉱閉山に伴う失業者対策などの財政支援として制定され、07年までに終了した。旧産炭地の経済を下支えした一方で、国への依存体質を招き、支援措置終了後は地域経済の衰退が加速した。
鎮西小中一貫校建設工事の入札に参加したある建設業社長は「合併特例債が終われば、市発注工事はがくっと減る。体力がない会社は縮小やリストラが進むだろう」と予測する。
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工事量の増大の一方で、飯塚市役所内部からは入札の仕組みにも疑問の声が上がっていた。
鎮西小中一貫校計5工区の入札では(1)市内企業(2)3社以上で共同企業体(JV)を組む(3)市発注工事で、施工中の案件がない(4)1工区を落札すれば、他工区の入札に参加できない-などの条件があった。市に登録する建設業70社のうち、入札があった8月時点でJVの代表者を務められる「S1等級」は5社。つまり入札に参加した5JVは、5工区のうちいずれかで必ず落札できる環境が整っていたのだ。
9月30日の市議会定例会で2人の市議が問題を追及した。
「談合情報がないから、談合はなかったと考える市の答弁は言語道断」(川上直喜市議)「行政自らが高い落札率を望んでいると思わざるをえない」(上野伸五市議)
この定例会より前の同月23日。斉藤守史市長は定例記者会見で、「(落札率)100%というのは好ましくない」との認識を示した上で、こう述べた。「しかし、ある意味では、地元業者に対する仕事がそこに発生しているわけだから、市民が供出した税金が回っていることは良かった。よそに出していないから」。
鎮西小中一貫校の入札から2か月半後の11月上旬、同市発注工事で落札率100%の入札があった。本年度8件目だった。
▼公共事業における談合 国や地方公共団体などが発注する公共工事や物品等の調達での入札で、参加事業者間で受注業者や金額をあらかじめ決める不正行為。「不当な取引制限」として独占禁止法違反などの適用対象になる。公正取引委員会によると、発注機関から公取委に任意で通報された談合情報は、2015年度が全国で433件(前年度比64件増)。発注機関の職員が予定価格を漏らすなどした場合は官製談合防止法違反になる。
この記事は2016年12月14日付で、内容は当時のものです。