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【君(ペット)がいるから】<6>24時間診療 命つなぐ

 竜之介動物病院(熊本市中央区)は2013年9月から、夜間の緊急対応もしています。365日24時間、来るか来ないか分からない動物のために、スタッフを配置し、深夜も明かりをつけています。熊本市では1カ所、九州でも珍しいと思います。

 日常的に診ていない動物を、緊急性の高い状態で受け入れることはトラブルにつながりかねません。それが夜間診療の怖さです。経営だけを考えるならやるべきではないのですが、飼い主からの要望が多かったのです。スタッフの9割は反対しましたが、私は開院当初から24時間診療はやるべきだと思っていました。

 通常診療は朝7時から夜11時まで。夜11時以降は、獣医師や動物看護師が常駐するなどして、緊急対応できる体制を取っています。いざ始めてみると、全く動物が来ない日もあれば、夜間のスタッフでは対応しきれないほどの動物が来る日もあります。

 やってくる動物と飼い主もさまざま。夜も開いているからと、緊急性もないのにコンビニのような感覚で予防接種に来たいという人もいれば、ペットの急な容体の変化で何十軒も動物病院に電話しては断られ、やっとたどり着いたという人もいます。

 夜間に多いのは、交通事故によるけが、原因が分からないけいれんや発作、出産のように急を要するものがあります。出産は微弱陣痛、赤ちゃんが引っ掛かったなどの理由で、帝王切開となるケースがよくあります。けいれんなどの場合、朝まで自宅で飼い主が不安なまま見守るのはつらいし、治療を受けることで一命を取り留めることもあります。かけがえのない命を助けることができたとき、安心した飼い主の顔を見たとき、やっぱり夜間診療をしていてよかったと思うのです。

 命を救えなかったとしても、その瞬間に獣医師が立ち会うことは重要です。飼い主が諦めず、ペットのために最善を尽くしたことで、その後の喪失感の軽減につながります。

 半面、歯がゆい思いをすることもあります。夜間は重篤な状態になって初めて駆け込んでくる人もいます。

 先日はがりがりに痩せ、低血糖でふらふらのトイプードルの子犬が来ました。飼い主の若い女性はプレゼントでもらった子犬だと言い、飼い方もよく知らないまま。最初の説明書に書かれていた量の餌をやり続けていたため、成長した子犬には栄養が全く足りていなかったのです。

 それでも、来てくれてよかった。私たちは正しい餌のやり方を伝えた上で、「動物の命を預かっている」という自覚を持つきっかけになってくれれば、と願うしかありません。

 (竜之介動物病院長、熊本市)

※この記事は2016/09/08付の西日本新聞朝刊(生活面)に掲載されました。

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