logo

【人の縁の物語】<49>永代供養増 時代映す 少子化、郵送での納骨も

 先祖代々受け継いできた墓を処分し、寺に将来にわたって託す「永代供養墓」を選ぶ人が増えている。少子化を背景に守り手がいなかったり、縁遠い遺骨を託されて困ったりと、それぞれの事情がある。

 佐賀県小城市の臨済宗妙鏡院(みょうきょういん)の住職、阿比留節眞(あびるせつしん)さん(42)は2010年に永代供養墓を設立した。あるおばあちゃんの言葉がきっかけだった。

 独り身で90代を迎え、永代供養墓を検討したが、わずかな年金では手の届かないところばかり。「ご先祖さまだけは無縁仏にしたくない。お金のない人間はどうすればいいのでしょう」

 永代供養墓は合同納骨や個別の墓石があるものなどさまざま。一般の墓より安く数十万~数百万円だが、別途の管理費や檀家(だんか)となることが条件の場合もある。

 高額な墓や葬儀に疑問があった阿比留さんは「営利目的だから高くなる。誰でも入れる墓をつくろう」と考えた。価格競争を仕掛けるつもりで「永代供養料2万5千円とお布施(お気持ち)」と設定。「お気持ち」は「その人が出せる範囲、数千円でもいい」という。

 おばあちゃんは墓の完成を、涙を流して喜んだ。今はその中で眠る。

 仏事の相談に乗るNPO法人「永代供養推進協会」(東京)によると、永代供養墓が急速に広まったのは3~5年前から。子どもがいない人、いても負担をかけたくない人のほか、経済的事情で納骨できない人のニーズを捉えた。

 協会代表の小原崇裕(たかひろ)さんは、寺への不信感も理由に挙げる。「檀家制度にあぐらをかき、一方的で不透明な金額を求める寺も多い。永代供養墓は一括料金で宗派を問われず、時代に合致したのでしょう」。相談者には現地を見学し、住職と話して信頼できる寺を選ぶようアドバイスしている。

 きちんと墓を構えないことをためらう声はあるが、小原さんは「お金のかけ具合は関係ない。故人をしのぶ心こそが大切です」と説く。永代供養を託した後も足繁く墓参りする人は多いという。

 そんな中、遺骨を郵送するだけで永代供養を有料で依頼できる「送骨(そうこつ)」が登場した。全国に広まり、妙鏡院も受け入れている。

 阿比留さんにはこんな経験がある。東京の列車内で、中年男性が風呂敷包みを網棚に残したまま席を立った。「忘れ物ですよ」。目があった男性は足早に去った。明らかに遺骨だった。

 愛媛県伊予市の真言宗入佛寺(にゅうぶつじ)は、こうした「忘れ物」を預かる鉄道会社や、孤独死に対応する自治体、生活保護世帯などから送骨を受けた。「寺に来る交通費さえない人もいる。困っている人々を救う一つの方法です」。インターネットなどを通じた依頼は2年間で約400件に上った。

 ところが、納骨堂の経営申請を伊予市に却下されて訴訟へ発展。昨年9月の地裁判決で「商業主義的との印象を与え、住民の宗教感情に適合しない」と敗訴し、高裁で争っている。

 家族のかたちや人間関係の変化に伴い、供養に対する考え方は複雑にせめぎ合っている。


=2014/01/14付 西日本新聞朝刊=

sponsored by 求人ボックス
西日本新聞me

福岡ニュースランキングを
メールで受け取る(無料)

「みんな何を読んでるの?」毎日17時に
ニュースTOP10をお届け。 利用規約を確認

西日本新聞me

福岡ニュースランキングを
メールで受け取る(無料)

「みんな何を読んでるの?」毎日17時に
ニュースTOP10をお届け。 利用規約を確認

PR

くらしのアクセスランキング

PR