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[2015年]【地方議員とカネ~オフレコ話】(1)月114万円足りないの?

 ◆福岡市議、赤字50万円私財削り
 
 6日、福岡市郊外の公民館。「皆さんの代弁者として、議会でしっかり発言します」。12日の市議選に立候補している60代の現職は、しゃがれ声で訴えた。

 政治と無縁の家系。相続した土地を売り、選挙や政治活動につぎ込んできた。その額、数千万円-。「いつも金には困っとるよ」。政治の世界に「井戸塀」という言葉がある。私財を費やし、井戸と塀しか残らない政治家の例えだ。

 市議の報酬は月88万円。月26万円の政務活動費も別に支給される。そんなにお金がいるのだろうか。

 選挙直前の3月末、朝の県道沿いに彼の姿があった。2時間のつじ立ちで、頭を下げること1200回。昼は老人会の会合に顔を出した。勧められるままビールを5杯と日本酒をおちょこ5杯。カラオケも付き合い、会費5千円を置いて帰った。年末年始や夏祭りの最盛期は、1日10カ所を超す。普段も2日に1回は地元関係者と飲む。

 1カ月の交際費は15万円。こつこつ積み上げた1万人分の後援会名簿が財産だ。年2回、会員に送る議会通信の印刷代と送料だけで約120万円が飛ぶ。

 毎月の支出はほかに事務所家賃や電話代に20万円、秘書などの人件費が40万円…。毎月50万円近い赤字を、蓄えを取り崩して埋める、あり地獄。「やり方を変えないかん」と思うが、票が減るのは怖い。昨年、市内の土地をまた売却した。

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 今期で退くベテラン世襲市議は、子どもに後を継がせず、地元で後継者を探した。選考条件は、議員報酬以外の収入で家族を養えること。「ある程度の余裕がないと、市の将来を大きな目線で考えられんよ」

 選挙が頭を離れず後援会活動に追われる同僚の姿を見てきた。いつも誰かに頭を下げ、休みもない生活。ベテランの前妻はかつて「政治家のあなたは嫌い」と家を出た。別の世襲市議の後援会幹部は「世襲は引き継いだ支持者も多く、金は掛かる」と明かす。

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 市議選に名乗りを上げた新人は、徒手空拳の戦いを挑んでいる。6畳1Kの部屋は、住まいと選挙事務所を兼ねる。「お金はそんな掛かりませんよ」

 家賃3万円。こたつに座椅子、ロックのCDが並び、学生の部屋のよう。立候補に必要な供託金50万円を払い、預金は50万円を切った。食費は1日1500円ほど。月収約20万円だった会社員時代と、暮らしぶりは変わらない。

 6日、街頭で「議員報酬と定数を2割削減します」と訴えた。ただし、当選しても1年生の野党議員だ。市議会与党に報酬を見直す動きはない。多数派をいかに説き伏せ、公約を果たすのか。「街頭で訴え続け、ムードを変えたい」。しばらく考え込んで言葉を継いだ。正直、ほかの手だては浮かばない。

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 国でも地方でも、政治とカネをめぐる醜聞が後を絶たない。報酬や政務活動費が、本来あるべき活動に使われないのは、単にモラルの問題なのか。地方議員たちの本音を探った。

=2015/04/07付 西日本新聞朝刊=

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