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調査3000万件、郵政多難 増田新社長ら、対象範囲拡大表明

経営への打撃不可避

 40万人の巨大グループの再建は前途多難だ。かんぽ生命保険の不正販売問題でグループ3社長が引責辞任し、郵政民営化委員会の委員長も務めた増田寛也氏を経営トップに迎えた日本郵政。9日の就任会見で増田氏は、重点調査対象の拡大を表明した。調査対象は3千万件と大きく膨らみ、全容解明にさらに時間がかかるのは必至。4月以降となる販売再開は一段と見通せなくなり、グループ経営の打撃となるのは避けられない。

 「社員の危機意識を高め、信頼回復を確実に成し遂げる」。増田氏は会見で決意を表明する一方、社内調査をいつまでに終えるのか明言できなかった。

 かんぽ生命が重点的に調査してきた約18万3千件の「特定事案」にこだわらず、約3千万件の全契約に調査の網を広げて不適切事案を拾い上げると断言した増田氏。かんぽ生命の千田哲也社長は特定事案と同様、社員が顧客を訪ねて聞き取りをすると述べた。

 昨年末の金融庁の行政処分に沿った判断だが、調査範囲は160倍以上に拡大。特定事案の調査も昨年12月15日時点で、法令や社内規定に違反した可能性がある1万2836件を特定したものの、精査が終わったのは2487件だけ。違反と認定したのは670件にとどまる。

 全契約者約1900万人については、意向に沿った内容かを確認するはがきを送っているが、返信があったのは昨年12月13日時点で約100万通だけ。うち10万人を超える顧客が苦情を寄せているが、人数は大幅に増えるとみられる。

   ■    ■ 

 昨年7月中旬から新規販売を自粛しているかんぽ生命は、昨年4~9月の新規契約数が前年同期比34・4%減、新規契約分の保険料収入(年換算)は同28・7%減とそれぞれ大きく落ち込んでいる。既契約の収入があるとはいえ、販売停止の行政処分が解ける4月以降も販売再開ができなければ、グループの経営はさらに厳しさを増す。増田氏は現在の中期経営計画の見直しも示唆した。

 市場の視線は厳しい。日本郵政の9日の株価は1026円50銭で、2015年の上場時の初値(1631円)より37%安い。市場関係者は「ガバナンスがあれだけ欠如していてはどうしようもない。機関投資家からすると最初に投資対象から落ちる」と突き放す。

 郵政民営化も遠のく。増田氏は「民営化は確実に推進していかなければならない」と強調したが、政府が凍結している日本郵政株の売却時期は「明示できない」。政府との間接的な資本関係がなくなる完全民営化への道筋は一段と険しくなった。

 退陣した前経営陣は3人とも民間出身者だったのに対し、新経営陣は3人が官僚出身で経営手腕は未知数だ。岩手県知事や総務相も務めた増田氏は「上場会社を経営した経験はないが、危機管理で官民の大きな違いはない」と述べ、当面は実態調査や顧客対応に専念する考えを強調した。 (飯田崇雄)

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