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不登校とどう向き合うか 行き場ない子ども、大人の姿勢は?

保護者へ教師へ「ヒント」

 文部科学省によると、2018年度に病気や経済的な理由などを除き年間30日以上学校を欠席した不登校の小中学生は16万4528人で過去最多を更新した。不登校の背景の一つとされる発達障害のある子どもたちとどう向き合い、支援していけばいいのか。昨年12月、教育関係者や保護者、学生らを対象に福岡市の九州産業大で開かれたセミナーに参加し、そのヒントを探った。

 セミナーでは奈良女子大研究院の伊藤美奈子教授が基調講演した。伊藤教授は、不登校の子どもへの支援を明記した教育機会確保法が施行され、国が不登校というだけで問題行動であると受け取られないよう配慮することを求めていることを挙げ「不登校に対する国の見方は大きく転換しており、不登校というだけで問題ではなくなった」と指摘した。一方「子どもが不登校を完全に肯定できているわけではない」として、多様な進路の保障など継続的な支援の必要性を訴えた。

 ≪あのしんどい学校には行きたくない、でも行けるものなら学校に行きたい(ネットを使って勉強はできるけど、先生から直接教わる学びも大事。学校が安心できる楽しい場所なら行きたい)≫

 ≪家だと安心できる、しかし心から安らいではいない(働いていた母親が自分の不登校で仕事をやめた。お母さんのため息がしんどい)≫

 不登校の子どもたちのカウンセリングを重ねてきた伊藤教授。そのやりとりを紹介しつつ不登校の形態が多様化する中、「不登校の数だけ子どもたちの思いはある」と言う。

 どんな親も子どもが心配で、ずっと寄り添っていたいと考えている。伊藤教授は面談したある中学男子生徒の母親の事例を挙げた。「子どもが学校に行くと言って準備したのに起きてこなかった。あの子に裏切られた」。当初感情をあらわにした母親もその後落ち着き、「話してくれたからこそ、怒りが子どもに向かわなかった」と感じた。

 伊藤教授は「親はどこかで吐き出すことが大事。自分を客観的に眺めることができれば冷静になれるかもしれません」と「ガス抜き」の大切さを説いた。

 教師と子どもの関係については、ある中学女子生徒が「ロープ」にたとえたと説明。クラスの子ども一人一人と担任は互いに長いロープを握っている。不登校の子どもが立ち止まったとき、一気に引っ張られるのは怖い。でも、いつか元気になって自ら引いたときは引っ張り返してほしいと願い「離さないで待ってて」と思っているという。

 「他の子どももいる中で持ち続けるのは大変だが、子どもは先生と一対一の関係を求めている。不登校の有無に関係なく、かかわっている子どもたちのロープの引っ張り方を探ってみてほしい」。伊藤教授は呼び掛けた。

「発達障害と密接な関わり」指摘も

 増え続ける不登校の児童生徒のうち発達障害の割合について正確なデータはないが両者は関係性が指摘され、近年は研究も進んでいる。発達障害は、他人の気持ちを理解しにくくコミュニケーションが苦手だったり、物事に集中できず衝動的な行動をしたり、人によって症状はさまざまだ。文部科学省の2012年調査では、全国の公立小中学校の通常学級に通う児童生徒の6・5%に発達障害の可能性があると推計された。

 彼らはその特性から教室では浮いた存在になりやすく、叱られたり、からかわれたりする対象になりがちだ。結果として不登校になるケースも多いとみられる。筑紫女学園大の大西良准教授(社会福祉学)は「子どもたちを取り巻く生きづらさは社会がつくり出しており、社会構造上の問題と捉えれば発達障害も不登校も根っこにあるものは同じではないか」と指摘する。

 今回のセミナーは、発達障害のある児童生徒への支援がテーマ。学校教育と福祉や医療など各分野が連携し、情報共有を図る場として九産大と福岡県内の私立4高校が中心となり開いた。学習支援の分科会では、福岡県私学教育振興会が、福岡県私学協会と共同で県内4カ所に開設、運営する学習支援センターについて紹介。全国でも屈指の規模で、不登校の高校生が自分のペースで学び、通所日数は在籍校の出席扱いにできる。07年の開所から延べ約1500人が利用し、6~7割は在籍校に復帰したという。森田修示副センター長は「セーフティーネットとしてセンターの存在を知ってもらい、生徒が自立できるよう進路決定に向けたサポートも続けていきたい」と話した。

 このほか、大学施設を不登校の子どもたちの“居場所”にし、現役の大学生と交流する筑紫女学園大の「キャンパス・スマイル事業」なども報告された。

 主管校の一つ、立花高(福岡市東区)の斎藤真人校長は「特別支援教育という言葉そのものが消えていくフラットな世の中になることを願っている。特別な支援を必要とする人全員が対象であり、境目をなくしていきたい」と語った。

不登校 九州7県で2万人超

 文部科学省の2018年調査によると、不登校の小中学生は6年連続で増加。高校生は5万2723人で2年連続増だった。九州7県では、小中学生が1万7245人(前年度比3025人増)、高校生が6619人(同606人増)。千人当たりで比較すると、小学生は大分、中学生は福岡、高校生は鹿児島の各県が最多で、いずれも全国平均を上回った。

(金沢皓介)

 

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