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陸自、離島防衛へ「布石」着々 九州・沖縄で演習「鎮西」 「即応」で抑止力強化

 陸上自衛隊が離島防衛の「布石」を着々と打っている。中国の海洋進出をにらみ、南西諸島に駐屯地を新設。「即応態勢」を強化し、抑止力の向上を狙う。24日まで約1カ月間、陸自西部方面隊(熊本市)が主体となって九州・沖縄各地で実施中の大規模演習「鎮西30」にも、その強い意思が反映されていた。陸上部隊が海を渡り離島に展開し、レーダーで「見えない敵」に対処する-。変革期の陸自の姿に迫った。

 今演習には全国最大規模の約1万7千人、車両約4500台、航空機約65機が参加。十文字原演習場(大分県別府市など)と日出生台演習場(同県由布市など)では一部をそれぞれ「島」に見立て、鹿児島港から「島の港」に想定した小倉港(北九州市)までミサイル部隊を民間フェリーで運搬。陣地を築いて「敵」の侵攻に備えた。

 15日午後、荒れ野が広がる十文字原演習場。顔を迷彩塗装した陸自隊員が「島」の山中に潜んでいた。近くの背の高い草木の陰には「03式中距離地対空誘導弾」(中SAM)。ヘリや戦闘機のほか、巡航ミサイルもレーダーで探知し、コンピューター制御で迎え撃つ「離島防衛の要」の一つだ。

 実は、もう一つの「要」が演習に先立つ10月中旬、健軍駐屯地(熊本市)で報道公開された。射程100キロ以上とされる「12式地対艦誘導弾」(SSM)。自前のレーダーに加え、海上、航空両自衛隊とも連携し、遠く離れた海域までにらみを利かせる。このSSMを空爆から守るのが、中SAMの「最大の役割」とさえ言われている。

 公開された15、16両日は、猛烈な艦砲射撃で援護された「敵」が優勢で「いかに生き残るか」という厳しい局面を想定。野外病院では医官らが次々に搬送されてくる重傷者の救命措置に追われていた。隊員は「けがが治れば前線に戻す。戦力維持は並大抵ではない」と説明した。

 九州本土から日本最西端の沖縄県与那国島まで距離約千キロ以上。従来、この広大な海域で陸自の拠点は沖縄本島だけ。16年の与那国島への沿岸監視隊設置を皮切りに、来春は鹿児島県奄美大島と沖縄県宮古島に新駐屯地を建設。今後は同県石垣島にも駐屯地を置く計画だ。

 「空白地帯」を埋め、中SAMとSSMのミサイル部隊を配備する計画に、陸自幹部は「即応態勢は整う。後は政府がいかに早く事態レベルを決められるかだ」と言う。だが、課題はある。日本版海兵隊とも言われる陸自「水陸機動団」を運ぶ輸送機オスプレイの佐賀空港配備や、石垣島への部隊配置には地元に反対や慎重論が根強く、丁寧な説明が欠かせない。

 陸自が描く「完成形」の実現はまだ見通せない。それでも、今年から南西諸島への即応態勢を担う「機動師団」に改編された第8師団の吉田圭秀師団長は演習の意義をこう表現し、国民の理解を求めた。「われわれは刀を一生懸命に研ぐが、それは抜かないため。抑止力を高めるためなのです」

=2018/11/21付 西日本新聞朝刊=

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