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中学2年、川崎がイチローを知った日。
「大体おかしいじゃん、カタカナだし」 

text by

川崎宗則

川崎宗則Munenori Kawasaki

PROFILE

photograph byMami Yamada

posted2014/03/26 16:30

中学2年、川崎がイチローを知った日。「大体おかしいじゃん、カタカナだし」<Number Web> photograph by Mami Yamada

川崎宗則が昨年の7月11日にヒーローインタビューで発した「See you tomorrow」という言葉は、あまりにキュートだと世界中にファンを生んだ。

「メジャーで最も愛される日本人選手」こと、川崎宗則選手。
苦労は表に出さず、苦しい時こそ前にでる。
そんな、野球小僧の人生論が本になりました。

3月26日発売の『逆境を笑え 野球小僧の壁に立ち向かう方法』より、
Number Webでは特別に、イチロー選手との出会いの項を公開します。

 小学生から中学2年まで、おれは右バッターだった。

 右利きだったし、右で打つのが当たり前だと思ってたからね。小学生のときは、ランニングホームランも打ったし、ヒットもけっこう打ててたと思う。

 それが中学に入ったら、先輩たちより打球が遠くへ飛ばないことに気づいた。みんな体が大きいのに、おれは細くて、背もそんなに高くなかったから。中学1年のときは、バットが重くて、振れなかった。当たっても、ポヨヨンって、全然飛ばない。『4P田中くん』って野球マンガがあって、主人公の田中球児君も小っちゃかった。その田中君が小さい体をさらに低くして構える『コンパクト打法』っていうのがあってね。バットは地面と平行に寝かせて、短く持つ。グリップをピッチャーに向けて、へその前にボールが来たら、腰の回転でスイングする。あの頃のおれ、ほとんどそんな打ち方をしてたような気がする。バッティングに対して自信をなくしてたのかもしれない。

 もちろん、試合に出られないのはイヤじゃない。トンボでも、バット引きでも、自分の仕事があるからね。ただ、やっぱりレギュラーになりたかった。だから、コツコツ、コツコツ、練習するしかなかった。

おかしいじゃん、イチローってカタカナだし。

 そんなとき、あの人を見た。

 当時の友だちが、教えてくれた。

 どこにでもいるでしょ、情報屋みたいな友だちが……その彼がすごい、すごいって大騒ぎしてた。4割を打つかもしれないすごい選手がいるって。

 イチローっていうんだって。

 正直、誰だ、と思った。だって、知らないよ、鹿児島の田舎もんだから。おれは巨人戦しか見なかったし、ニュースの時間は寝てたから。だいたい、おかしいじゃん、イチローってカタカナだし。

 すぐにスポーツニュースを見た。イチロー選手が打って、走る姿を見て、こんなスマートな野球選手がいるのかって、ビックリした。強いプロ野球選手といえば清原和博選手とか松井秀喜選手とか、体が大きいと信じてた。それが、あんなに体が細いのに誰よりも強い。誰よりも飛ばすし、誰よりも速い。

 まさに、光だった。

【次ページ】 イチローにはなれるかもしれない。

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