オピニオン・西野芙美

TENGA発の女性向けラブグッズirohaが変えた性の日常風景

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TENGA社に勤めて、もうすぐ丸7年になる。各ブランドのPRに携わり、成長を実感してきたが、中でも著しい変化を遂げてきたのが女性向けセルフプレジャーアイテムブランド「iroha」である。

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かつてはハードルが高かったセルフプレジャー

2018年、大阪・大丸梅田店でのポップアップストア
2018年、大阪・大丸梅田店でのポップアップストア

私が入社した2017年当時、irohaというブランドは、今よりもずっと認知度が低かった。女性がプレジャーアイテムを手に取りやすい場所は少なく、女性向けメディアが取り上げてくれるのもまれなこと。恋愛の話につなげやすいセックスは取り上げられても、女性のセルフプレジャーは「さびしい人、変わった人がすること」という見られ方をしていた。

そんな状況だから、一般の方がSNSでセルフプレジャーやアイテムについて語るのはハードルが高すぎる。情報発信してくれるのは、性に関する記事を手がけるライターの方や、医師やカウンセラーなどの専門家の方がほとんどだった。

潮目が変わったのは2018年、大阪・大丸梅田店でのポップアップストア開催だったように思う。

「百貨店にプレジャーアイテムが並べられる」というのは、irohaとしても、日本全体を見ても、まったく初めてのことだった。「タブーとされる『性』の相談を誰にもできず、悩んでいる方に向けてソリューションを提供したい」と、大丸の担当者の方が信念を持って準備してくれた企画である。店舗のこと、接客のこと、irohaに関わる女性社員が総出で準備をした。多くのメディアに取り上げてもらえるよう、広報活動もできる限りのことをした。

絶対に成功させたいと思いつつ、ちゃんとお客様がいらしてくれるか、クレームが殺到しないかと不安な気持ちも湧いてきた。なにせ前例がないのだ。お客様がどんな反応をされるのか、まったく分からなかった。

そうして迎えたポップアップストアは、大盛況だった。新聞やテレビが取り上げてくれたこともあり、約2週間のうちに1500人の方が来店されて、売上は目標金額の3倍以上になった。明るい空間で、女性たちが「これ、かわいい!」「こっちも良くない?」と笑い合いながら、コスメを選ぶようにプレジャーアイテムを選んでいる。いつかそうなってほしいなと思いつつ、すぐには実現できないだろうと思っていた光景が、目の前に広がっていた。あの時の感動というのは、ちょっと言葉にならない。

その後の2019年には、同じく大丸梅田店に常設店がオープンした。現在まで1万人以上のお客様が来店され、70代、80代のお客様も足を運んでくださる。

Webでirohaを知ってずっと気になっていた方、自分の快感をもっと育ててみたいと興味を持った方、「長い間、夫とレスでもんもんとして、女性に性欲があるのはいけないことだと思っていた。ずっと悩んでいたけど、お店に来て、そうじゃないんだと感じた」と涙する方。本当にさまざまな方が、それぞれのニーズを持って来店される。

ポップアップストアの時と最近の常設店で大きく異なるのは、「女友達にプレゼントしたい」という方が非常に増えたことだ。そのくらい、irohaが身近なアイテムになってきたのだ。

「女性の性」を女性の手で明るく活発に発信したい

2023年3月に10周年を迎えたiroha。アンバサダーの水原希子さん
2023年3月に10周年を迎えたiroha。アンバサダーの水原希子さん

現在、女性向けメディアでは「セルフプレジャー特集」がごく当たり前に組まれるようになった。昨年3月にiroha10周年を迎えたタイミングでは、水原希子さんがアンバサダーに就任されて、新聞に全面広告を出稿することができた。プレジャーアイテムブランドが新聞広告を出すのは、おそらく日本で初めてのことだ。一般の方による情報発信も増えて、セルフプレジャーに関するSNS投稿をたくさん見かける。

「女性の性」に関する発信が、女性たちの手で明るく活発に行われる。今では当たり前になってきたことだが、その背景には「女性たちの健やかな人生のために、性に関することを過剰に隠すのではなく、オープンに話せるようにしたい」と願うたくさんの人たちの奮闘があった。ポップアップストアも新聞広告も情報発信も、irohaだけではできなかったことだ。同じ思いを抱いて、性に関する情報を世に伝え、アイテムや知識との接点を増やす。業界や立場を超えた人々の地道な活動が、今をかたちづくっている。

性が極度にいやらしいものでも、常に真面目に取り扱うべきものでもなく、女性にとって自然で身近なものに感じてもらえるように。初心を忘れず、これからも活動を続けていきたい。(株式会社TENGA 国内マーケティング部 部長・西野芙美)

プロフィル

西野芙美
西野芙美(にしの・ふみ)
株式会社TENGA 国内マーケティング部 部長
1989年、東京下町生まれ。早稲田大学文化構想学部を卒業後、出版社勤務を経て、株式会社TENGAに広報として入社。 2021年3月より現職。TENGAグループが展開するブランド「TENGA」「iroha」「TENGAヘルスケア」「CARESSA」「TXA -TENGA by Artist-」や、障がいのある人の就労自立支援プロジェクト「able! Project」のPR活動を統括している。
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4911463 0 大手小町 2024/01/11 06:00:00 2024/01/17 09:03:02 https://www.yomiuri.co.jp/media/2024/01/20240111-OYT8I50013-T.jpg?type=thumbnail

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