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おっさんずラブを超えて時代を癒やす、田中圭と林遣都の俳「優」力

田中圭さんと林遣都さん。名作「おっさんずラブ」でカップルとなった2人の“優しさ”が俳優力の決め手になっていると筆者は見ます。

(左から)林遣都さん(2016年10月、EPA=時事)、田中圭さん
(左から)林遣都さん(2016年10月、EPA=時事)、田中圭さん

 NHK連続テレビ小説「スカーレット」第99話(1月29日放送)で、俳優の林遣都さん演じる信作がついに結婚することを公表しました。相手はヒロイン・喜美子(戸田恵梨香さん)の妹である百合子(福田麻由子さん)です。このカップルがいつそれをできるのかはドラマの一つの関心事でしたが、このタイミングになったのには理由があります。

 それは、穴窯での陶芸がうまくいかず、落ち込む喜美子を笑わせるためというもの。彼女の友人でもある信作は「笑われること」が自分の役割だとしてこれを実践します。

 一方、その前日放送のTBS系連続ドラマ「恋はつづくよどこまでも」第3話では、ヒロインの新米ナースが過去の喪失体験を引きずる先輩医師に対して「私が笑わせます」と宣言していました。

 後者のパターンが割と定型的なのに比べ、前者のように、仕事に悩む女性を男性の友人が笑わせて励ますというのはそうでもありません。が、その展開や演技が自然で全く違和感を覚えなかったことに時代の変化を感じたものです。

 というのも、今は男性がフェミニンな優しさを持ち、女性に示すことがよしとされる時代。そして、林さんはそういう状況を象徴する俳優の一人です。

「スカーレット」でもボーイズラブ?

 例えば、1月25日の「土曜スタジオパーク」(NHK総合)に登場した際、ネットでは、演技以外に彼のこんなところが称賛されていました。

「戸田恵梨香さんの名前を結構出していて、主役を立てようとしてる」「敬語の使い方とか、おじぎの深さもすてき」

 これは昔の日本女性に望まれていたかのような美徳です。かと思えば「スカーレット」第77話で、こんなせりふが話題になりました。

「俺なあ、もはや男の方が好きなんちゃうか思うぐらい、ほんまは女の子、苦手やねん」

 これには、2018年に大ヒットした連続ドラマ「おっさんずラブ」(テレビ朝日系)を思い出した人もいたようです。男たちの乙女心をコミカル、かつ切なく描いたこの作品で、彼は重要な役をこなしました。「スカーレット」でも、ヒロインと結婚する八郎(松下洸平さん)との関係がボーイズラブ的なものをうっすら感じさせるとの見方があります。

 もちろん、NHKがどこまで狙っているかは不明ですが、「おっさんずラブ」が提示した世界観や、そこで発見された林さんの魅力をうまく生かしているのが、信作というキャラクターでしょう。

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宝泉薫(ほうせん・かおる)

作家、芸能評論家

1964年岐阜県生まれ。岩手県在住。早大除籍後「よい子の歌謡曲」「週刊明星」「宝島30」「噂の真相」「サイゾー」などに執筆する。近著に「平成の死 追悼は生きる糧」(KKベストセラーズ)、「平成『一発屋』見聞録」(言視舎)、「あのアイドルがなぜヌードに」(文春ムック)など。

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