最も安い1泊2日で32万円。それでも平均倍率は6.6倍。今年5月に運行を開始したJR東日本のクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」が人気だ。運行開始はJR九州に遅れたが、実は構想はそれより早かった。なぜなら東日本大震災がきっかけだったからだ。東北をまわる観光列車の企画意図とは――。
■「TRAIN SUITE 四季島」の気になるポイント
・JR東日本がクルーズトレインを作った理由
・先行したJR九州の「ななつ星in九州」を意識したか?
・17組しか乗れない列車で、採算は取れるのか
・最新動力装置「EDC」採用の理由
・1人あたり32万円から142万5000円の旅の価値
・いままでの列車旅の常識を越えるサービス
・ひとりひとりに感動を演出、その中身は?
JR東日本のクルーズトレイン「TRAIN SUITE 四季島」(外観、以下写真はすべてJR東日本提供)

日本のクルーズトレインの最高峰

近年、目立って増えている観光列車。そのなかでも最高ランクに分類されるのが、JR東日本が運行する「TRAIN SUITE 四季島(トランスイートしきしま)」だ。2013年に走り始めたJR九州の「ななつ星in九州」と、今年6月17日に運行を開始したJR西日本の「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」と合わせて「クルーズトレイン御三家」と呼びたい。あまりにも飛び抜けた内容だから、他の観光列車とは違うカテゴリーにしてもいいくらいだ。

トランスイート四季島の食堂車とスタッフ

TRAIN SUITE 四季島は、その高額な料金も話題になった。3泊4日の料金は95万円(2名1室の1名分)、2名で190万円となる。しかしこれは最上級のメゾネットタイプの客室「四季島スイート」で、高額な観光コースを選択した場合だ。もっとも多い客室の「スイート」は、3泊4日で74万円、2名で148万円。国際旅客機のファーストクラスと同じぐらいの価格水準だ。1泊2日コースであれば、1名32万円、2名64万円で利用することもできる。第1期、2017年度5・6月のツアーは募集数187枠に対して1234件の申し込みがあり抽選となった。平均倍率は6.6倍、最高倍率は初運行の最高ランクの部屋で76倍。従来の鉄道旅の常識を越える料金でこの人気である。

それにしても高額だ。どれだけの自信をもって、この料金を設定したのか。JR東日本 鉄道事業本部 営業部 TRAIN SUITE 四季島担当部長 高橋敦司氏に聞いた※。

※高橋氏は本記事の取材後に異動し、現在はグループ会社の大手広告代理店、株式会社ジェイアール東日本企画の常務取締役となっている。