デキる人の資料はどこが違うのか。日本IBMでエグゼクティブ・プロジェクト・マネジャーを務める木部智之氏は「仕事で大きな成果を出している人の資料には、必ず『バイアス』がかかっている」といいます。さまざまなテクニックで、相手を自分の考えに誘導しているのです。具体的な方法を紹介しましょう――。

※本稿は、木部智之『複雑な問題が一瞬でシンプルになる2軸思考』(KADOKAWA)を再編集したものです。

キレイなだけの資料は必要ない

「資料作成が苦手」と考えている人は多いですね。では、資料作成の「何が」苦手だと考えていますか?

木部智之『複雑な問題が一瞬でシンプルになる2軸思考』(KADOKAWA)

「キレイな資料が作れない」「パワーポイントの機能を使いこなせない」「パッと見てインパクトのある資料を作れない」と思ってはいないでしょうか?

実は、これらの悩みは、資料作成の本質を取り違えた悩みです。

よい資料とは、決して「見た目がよい資料」ではありません。ここを勘違いすると、資料作成のドツボにハマるので気をつけてください。資料の良しあしを決める要素は、「見た目」ではなく「内容」です。

当たり前ですね。私の講座でも「資料は内容が大事」と言いますと、「そんなのわかっているよ」という人がたくさんいるのですが、実際のところ、それができていないから、伝わらない資料を作り続けているのです。

大切な「結果」を読み手にゆだねてはいけない

資料を単なる「報告」のツールだと思っていないでしょうか?

それは違います。

資料とは、自分の「意思」を存分に入れ込むためのツールです。

仕事で大きな成果を出している人の資料には、必ず「バイアス」がかかっています。自分が得たい結果となるように、「相手を誘導する」ためのコミュニケーションを文書の中に入れ込んでいるからです。

「バイアス」の本来の意味は、考え方や意見が他の影響を受けて偏ってしまうことを言います。ですから一般的には、「バイアスがかかっている」という表現は、ネガティブな表現として広く使われています。ですが、資料作成においては、まったく悪いことではありません。

もちろん、文書の中で虚偽データや嘘の情報を入れ込むことは論外ですが、「自分はこうしたい」「こうすべきだ」という強い意思を込めた表現を入れ込んでいくことは、とても重要です。

資料(1)「あなたはA案とB案のどちらがいいですか?」

資料(2)「A案とB案がありますが、コレコレの理由でA案のほうが優位です」

(1)のような「さあどっち?」という質問を投げかける資料を作るのと、「A案しかないでしょう」という、A案を採用してもらえるように誘導する資料を作るのとでは、結果がまったく違ってきます。

資料を作るときには、必ず自分の意思を明確に入れ込みましょう。読み手に判断をゆだねてしまうのは絶対に避けたいです。