決して年収は高くないのに、お金を貯められる人がいる。どこか違うのか。雑誌「プレジデント」(2017年2月13日号)の特集「金持ち夫婦の全ウラ技」より、人生の3大出費のひとつ「住宅」にまつわる知恵をご紹介しよう。第9回は「家探し」について――。(全12回)

好条件物件の2割は「おとり」

不動産の賃貸物件もいまは主にネットで探す時代だ。そんな中、横行しているのが「おとり物件」。「おとり広告」「釣り物件」とも呼ばれる。

どんな物件かといえば“架空”の物件だ。引っ越しを予定している人がネットなどで「掘り出し物件(広さのわりに賃料が安い、など)」を発見したものの、実際に不動産屋を訪ねてみると、「実は、その物件はついさっき成約した」などと言われ、他の物件をあてがわれるような事例がとりわけ引っ越しシーズンに多発している

東京・高田馬場で「暮らしっく不動産」を運営するラインズマン代表の門伝義文氏は語る。

「正確にはわかりませんが、ネット上で『好条件』と思われる物件の約2割が“おとり”という印象です」

直接大家と関係のない不動産業者が関わることも多い

なぜ、おとりが横行しているのか。大家から物件を預かり、店子を探す不動産業者にとって「成約」こそが商売の種だ。その成約率をいかに上げるかといえば、客の来店率を上げることが必須となる。そこで、おとり物件で客を店に引き寄せ、他の類似の物件を紹介して成約へと導くのだ。

探す側としては、類似物件に希望の条件に合うものがあり、納得できれば無駄足にならないが、出向いて損だったケースは決して少なくない。業者側には、おとりのほかにも物件はあり、結果的に客の条件に合うものが見つかればいいでしょ、という甘い考えがあるようなのだ。

問題はそれだけではない。

「不動産業者には大家から物件を預かる業者だけでなく、実は直接大家と関係のない不動産業者が関わることも多いのです。彼らは物件情報をネットで客に紹介することで利益を得ます。そうした、いわば“客付け仲介業者”の一部には、物件情報を勝手に“加工”する者が存在するのです」(門伝氏)

ひどいケースだと、彼らは前出のおとり物件をさらによりよく見せるため、物件情報を勝手に“数値改ざん”するという。