データが表に出てくることの少ない「企業年金」の情報。「あの有名企業はたくさん貰えるらしい」「公務員は優遇されている」など噂程度でしか知らないのが実情だろう。今回編集部では、そんな企業年金を徹底取材。専門家やOBに、実態を聞きに行った。

※本稿は、雑誌「プレジデント」(2018年1月1日号)の特集「老後に困るのはどっち?」の記事を再編集したものです。

大企業の平均退職金(退職一時金+企業年金)は約3060万円

会社員には、企業が独自に年金を支給する「企業年金」制度がある。だが、退職後にいくら受け取れるのかを知っている人はほとんどいないだろう。企業年金は退職金のなかに含まれており、自分の退職金がいくらになるのか知らない人も多いのではないか。

東京海上日動火災保険 401k事業推進部担当部長 佐藤政洋氏

退職金は一般的に退職一時金と企業年金の2つで構成され、企業年金は確定給付年金と確定拠出年金(日本版401k)の2つがある。確定給付は受け取る年金額を会社が保証するものだが、確定拠出は会社から拠出された掛け金を社員が自分で運用し、運用次第で年金額が変動する“不確定給付年金”だ。といっても企業規模など会社によって企業年金がないところもあれば、退職金額が違うなど大きな格差が存在する。

人事院の調査(2017年4月)によると定年退職者全体の平均退職金は約2460万円(勤続38年)。そのうち退職一時金が1006万円、企業年金が1454万円。従業員1000人以上だと退職金約3060万円。退職一時金が約1008万円、企業年金が2052万円になる。一方、100~499人の企業は一時金818万円、企業年金842万円の計約1660万円と大企業と1000万円超の格差がある。

しかもすべての会社に企業年金があるわけではない。退職一時金のみの企業が全体の48.3%、企業年金と一時金を併用している企業は39.6%とバラツキがある。従業員1000人以上の企業はさすがに67.5%と併用型であるが、100~499人は44.6%が一時金のみであり、企業年金がない企業も多く、その比率も近年増加している。

その理由について東京海上日動火災保険の佐藤政洋401k事業推進部担当部長は「中小企業向けの適格退職年金制度が12年に廃止されました。もう1つの厚生年金基金も解散やほかの企業年金への移行を促す法律が、14年に施行された。本来であれば別の年金制度に移ることになるのですが、積み立て不足や資金不足もあって、企業年金自体をやめる中小企業が増えた。社員にとっては定年後に受け取るはずの給付の約束がなくなってしまうことになる」と指摘する。