日本企業には「劣化したオッサン」が多いという。それは昇進の望めない人材でも、簡単には解雇されないからだ。このため「日本企業は人に優しく、外資系企業は厳しい」ともいわれる。だがコンサルタントの山口周氏は、「40代後半になってからキャリアの天井にぶつかる日本企業より、若い段階で仕事の向き不向きが分かる外資系企業のほうが中長期的には有利だ」と指摘する――。

※本稿は、山口周『劣化するオッサン社会の処方箋』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

「日本企業は人に優しく、外資系企業は厳しい」は本当か

現在の50代・60代のオジサンたちは、「大きなモノガタリ」、つまり「いい学校を卒業して大企業に就職すれば、一生豊かで幸福に暮らせる」という昭和後期の幻想が存在することを前提にして20代・30代のときに社会適応したにもかかわらず、そのあと社会から裏切られてしまった世代だと言えます。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Milatas)

ここでは、同じ問題を別の角度から考察してみましょう。

それは、よく言われる「日本企業は人に優しく、外資系企業は厳しい」というのは、本当なのかという問題です。

このような指摘がなされる要因は非常にシンプルです。すなわちそれは「外資系企業は容赦なく人を解雇するけれども、日本企業は解雇しない」ということでしょう。

確かに、解雇は当人にとってたいへん大きなストレスになりますから、これをなるべくしないということは「優しさ」と解釈してもおかしくはありません。

しかし、解雇せずに会社のなかに留め続けておいた人材が最終的にどうなるかというと、結論は明白です。社員数が10万人を超えるような企業であっても社長は1人しかいませんから、どこかでキャリアの天井にぶつかることになります。

では、キャリアのどの段階で天井にぶつかるかというと、多くの日本企業では四十代の後半で、ということになります。

40代後半で取れるキャリアオプションはほとんどない

しかし、これが本当に「優しい」のでしょうか。40代の後半で、「あなたはこの会社ではこれ以上の昇進は望めませんよ」と言われても、その時点で取れるキャリアオプションはほとんどありません。

先述したとおり、その人の労働市場における価値は、人的資本と社会資本の厚みによって決まるわけですが、多くの人は会社の内部にこれらの資本を蓄積するため、資本が人質となってロックインされてしまうからです。