子供の頃に熱中したスポーツは、人格形成に大きな影響を与えているのではないか。集団競技か、個人競技か。ポジション、プレースタイル、ライバルの有無……。ノンフィクション作家の田崎健太氏は、そんな仮説を立て、「SID(スポーツ・アイデンティティ)」という概念を提唱している。この連載では田崎氏の豊富な取材経験から、SIDの存在を考察していく。第4回は「サッカー」について――。
写真=時事通信フォト
決勝トーナメント1回戦・日本-ベルギー。前半、指示を出す日本代表の長谷部誠=2018年7月2日、ロシア・ロストフナドヌー

現代サッカーでは「8番」が重要

サッカーとははじまりこそ、フォーメーションがあるが、その後、緩やかにポジションを変えていく。自分が直接相対する選手の能力、自分たちのコンディション、あるいは相手のフォーメーションに合わせてポジションを変更していく。強いチームであるほど、臨機応変にチームの形を変えることが出来る。2つと同じ試合はない。

そのため、同じ選手であっても試合によって役割が変わる。そして、サッカーの戦術の進化は激しい。ジーコやマラドーナのように試合をコントロールする「10番」は古典的になってしまった。ストライカーである「9番」でさえも、近年のスペイン代表が採用した、固定した9番を置かない「ゼロトップ」、あるいは9番のポジションではあるが、自らは囮になり中盤の選手の得点力を生かす「偽9番」というポジションもある。それでも10番、9番というだけで、未だにその役割は大まかに伝わる。

キーパーの1番を除いて流動的になった背番号的SIDの中で、「10」「9」と並んで重要だと思っているのは「8番」だ。

1982年のワールドカップでブラジル代表の「8番」を付けていたのはキャプテンのソクラテスである。そして何よりセレソンの「8番」の印象を決定づけたのはドゥンガだろう。ドゥンガは90年のワールドカップでは「4番」、優勝した94年と準優勝の98年大会で「8番」を付けている。