アングル:トランプ氏長男のメール、選挙法違反疑いで調査も

[ニューヨーク 11日 ロイター] - トランプ米大統領の長男、ドナルド・トランプ・ジュニア氏(39)が、大統領選挙中に、父親に有利となり得る対立候補の情報を持つとするロシア政府の弁護士と会合した問題で、専門家は米選挙法に違反しているかどうか同氏に調査が及ぶ可能性があると指摘する。
トランプ・ジュニア氏は、仲介者と電子メールのやりとりをした後、昨年6月9日にヒラリー・クリントン民主党候補に関する情報を持つとされるロシア人の弁護士ナタリア・ベセルニツカヤ氏と面会した。
この電子メールの内容は、トランプ・ジュニア氏がツイッターで11日公開しており、昨年の米大統領選でトランプ陣営とロシアが共謀した可能性について捜査しているモラー特別検察官に資料を提供することになるかもしれない。
問題の会合を取り持ったパブリシストのロブ・ゴールドストーン氏は、公開された2016年6月3日付のメールの中で「ロシア政府の弁護士が公文書に加え、クリントン氏に不利となる情報および同氏のロシアとの対応に関する情報をトランプ陣営に提供することを申し出た。あなたのお父さんに非常に役立つだろう」と指摘。さらに「これが高官レベルの機密情報であることは明確だが、ロシアと同国政府のトランプ氏に対する支持の表れといえる」と述べている。
同日付メールの1つで、トランプ・ジュニア氏は「それが本当なら素晴らしい」と書いている。
同氏がメールを公表したのは、ロシア人弁護士との会合を最初に報じた米紙ニューヨーク・タイムズが、メールの内容を報道すると同氏に伝え、コメントを求めた後のことだったという。
トランプ・ジュニア氏はツイートで、会合では何もなかったと主張。ベセルニツカヤ氏は11日、NBCとのインタビューで、ロシア政府とのつながりはなく、情報は何も渡していないと語った。
「今にして思えば、もう少し違ったように事を行えばよかったのかもしれない」と、トランプ・ジュニア氏はフォックス・ニュースとのインタビューで述べている。「私にとって、これは対立候補に関する調査だった」
米刑法の下では、共謀自体は犯罪にはならない。したがって、検察当局はトランプ・ジュニア氏の行為がある特定の法律に抵触していたかどうかについて調べることになると、法律の専門家は指摘する。
ロシアは米大統領選への介入を否定し、トランプ米大統領も自身の選挙陣営がロシアと共謀していないと主張している。
トランプ・ジュニア氏の弁護士、アラン・フターファス氏はコメント要請に応じなかった。モラー特別検察官の報道官もコメントを差し控えた。
<米連邦選挙運動法>
ここで浮上する法律は、米連邦選挙運動法かもしれない。同法は、外国籍を有する人物が米国の政治運動に寄与することを違法としている。また、そのような貢献を求めることも禁じている。
貢献は必ずしも金銭的なものとは限らない、と米監視団体「コモン・コーズ」の弁護士、ポール・S・ライアン氏は言う。クリントン氏に不利な情報は、同法の下で貢献とみなされる可能性があると指摘する。
同氏によると、トランプ・ジュニア氏が情報提供の申し出を「大歓迎」し、とりわけ翌週にフォローアップの電話をメールで提案していることは、「要請」にあたるという。
「私には、それはドナルド・トランプ・ジュニア氏が情報を欲し、求めていることを認めているようにとれる」とライアン氏は語った。
ケンタッキー大学法科大学院のジョシュア・ダグラス教授は、トランプ・ジュニア氏のメールは、同氏に対して刑事事件の可能性があることを「よりもっともらしく」示しているとの見方を示した。
一方、選挙運動法は、現金や物品、サービスによる寄付を対象としていると、米ニューヨーク州立大学バッファロー校法科大学院のジェームズ・ガードナー教授は指摘。
同教授は、トランプ・ジュニア氏がクリントン氏にダメージを与えるような情報を求めたのであれば、それが選挙運動法に違反するとは思わないと語った。
また例えば、ロシアが米国のコンピューターネットワークにハッキングするのをトランプ・ジュニア氏が助けようとしたのであれば、米国に対して罪を犯す、あるいは欺くために共謀することを違法とする、一般的な共謀罪に関する連邦法が適用される可能性がある。ただし、トランプ・ジュニア氏がそのような行為を行ったという兆候はない。
一方、同氏が違法行為を話し合うため誰かと会合を持つことに同意したのであれば、それは共謀容疑をかけるに十分との見方を、オバマ前政権で次席法律顧問を務めたサバンナ法科大学院のアンドリュー・ライト教授は示している。
「それは非常に強力な手段だ」と同教授は語った。
(Jan Wolfe記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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