アングル:新型肺炎で早期解散観測後退、五輪後の首相判断に注目

アングル:新型肺炎で早期解散観測後退、五輪後の首相判断に注目
 昨年来、永田町の一部でささやかれていた今年前半の衆院解散について、可能性は低いとの見方が広がっている。春以降は東京五輪・パラリンピックの準備が本格化するため、安倍晋三首相が早期衆院解散に踏み切るならば通常国会冒頭や19年度補正予算通過後というタイミングが取り沙汰されていた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、現時点での選挙は国民の理解を得られないとの見方が与党内で増えている。写真は都内で昨年12月撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
竹本能文
[東京 4日 ロイター] - 昨年来、永田町の一部でささやかれていた今年前半の衆院解散について、可能性は低いとの見方が広がっている。春以降は東京五輪・パラリンピックの準備が本格化するため、安倍晋三首相が早期衆院解散に踏み切るならば通常国会冒頭や19年度補正予算通過後というタイミングが取り沙汰されていた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大により、現時点での選挙は国民の理解を得られないとの見方が与党内で増えている。
安倍政権が前回衆院解散に踏み切ったのは2017年9月。すでに2年4カ月が経過している。2021年10月の衆院議員の任期満了が真近に迫れば、追い込まれ解散となるため、首相は2020年中に解散に踏み切るとの観測は多く、実際首相は解散時期の模索を続けてきたとみられる。
昨年は与党内で7月の参院選に合わせた衆参同日選の観測が広がったが、安倍首相自身も「迷わなかったといえばうそになる」と述べ、一時検討したことを明らかにしている。
一方、衆院解散に適したタイミングは少なくなりつつあるとの見方も与党内で広がっている。「五輪後は日本経済が厳しくなっている可能性がある」(与党幹部)ためだ。一方で、7月には東京都知事選、4月には立皇嗣の礼など重要行事が多い。このため1月には「年内解散にふさわしいのは実は今。通常国会冒頭解散をすればいい。内閣支持率も底打ちしている。しかしイラン危機でできなくなった」(別の与党幹部)との指摘が出ていた。
その中で通常国会冒頭で審議される19年度補正予算の通過後に、解散の可能性があるのではとの見方も一部に浮上していた。しかし、1月30日、19年度補正予算が参院本会議で成立。与党関係者の間では「これで五輪前解散はなくなった」(与党中堅)との声が広がった。
ある与党幹部も「新型肺炎で(早期の)衆院解散は完全になくなった」と言い切る。与党参院幹部は「解散は首相の専権事項だが、現実問題、肺炎が続いている間の選挙は難しい」と解説する。
年末からの立憲民主党と国民民主党の合流協議が1月に頓挫したが、これも「解散がないとみているからなんだろう」(経済官庁幹部)との解説も聞かれる。
もっとも、安倍首相は年初来「現時点では頭の片隅にもないが、信を問うべきときに解散を躊躇しない」(1月23日衆院代表質問)などと、憲法改正を進めるための解散に前向きな姿勢を前面に出している。
ある与党幹部は「首相は結局年末まで決められないのではないか。11月の米大統領選でトランプ大統領が再選し、『お前ももっと首相をやって付き合え』と言われるような場合、解散に踏み切り、結果次第で4選も目指すということがあり得る」と解説している。

編集:石田仁志

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