安倍首相、自民党総裁選で連続3選:識者はこうみる

[東京 20日 ロイター] - 20日投開票の自民党総裁選では、553票を獲得した安倍晋三首相が、254票の石破茂元幹事長を破り、連続3選を決めた。安倍首相が主要派閥を押さえて圧勝したが、石破陣営も200票の目標を上回り善戦した。
市場関係者のコメントは以下の通り。
●注目の来年選挙、リスクは安倍首相の早期退陣
<三菱UFJモルガン・スタンレー証券・シニアマーケットエコノミスト 六車治美氏>
自民党総裁選は安倍首相の連続3選という結果に終わった。事前に安倍首相の圧勝という予想もあったが、国会議員票・地方票とも石破氏が善戦した。党内で安倍首相の政治手法に対して批判をしやすくなったともいえる。
次の焦点は、来年の統一地方選と参院選。総裁選の結果や今後の世論調査が来年の選挙にどのような影響をもたらすかだ。来年の選挙結果次第で、安倍首相が早期退陣を迫られるリスクシナリオを市場は意識する必要もありそうだ。
今回の総裁選で政策議論が高まらなかったのは残念だ。そのため、市場が次の政策として何を織り込んでいいのか、わからない面も出てきた。アベノミクス「3本の矢」のうち、成長戦略が力抜けし、「骨太の方針」も目玉が見当たらなくなっている。安倍首相には初心にかえって政策運営を進めて欲しい
●株安は一時的、海外勢の日本株買いをサポート
<JPモルガン証券 チーフ株式ストラテジスト 阪上亮太氏>
石破元幹事長の票が多めに出た印象がある。ただマーケットに影響を及ぼすほどの差となったわけではない。ほぼ市場の想定通り、安倍首相が多数の支持を受けて再選されたと解釈している。政治の安定が確認されると海外勢は日本株を買いやすくなる。株安は一時的な反応だろう。サプライズは全くない。
今年は海外勢は日本株を大幅に売り越している。日本企業の堅調な業績を考慮すれば「売り過ぎ」の感があった。買い戻しが入りやすい地合いにある中での今回の結果は、海外勢の日本株買いのサポート材料という位置づけになる。
当面は消費増税の取り扱いや社会保障改革、憲法改正の動きが焦点になる。経済政策は基本は従来通りだろう。憲法改正のトーンが強く出てくると、マーケットでは嫌気されるリスクがあるが、これは支持率次第。一方で、参院選などを前に安倍政権に不透明感が出た場合、金融政策の出口が近づくと市場が受け止める可能性はある。
●円高でも円安材料でもない
<みずほ証券 チーフFXストラテジスト 鈴木健吾氏>
自民党総裁選では、安倍首相が石破元幹事長を破り連続3選が決まった。
安倍首相が圧勝することは、市場にほぼ織り込み済みだったことや、石破氏が予想以上に善戦したことで、為替市場は総裁選の結果を、円高材料とも円安材料とも捉えなかった。
今月に入ってドルは堅調だが、112円半ばを超えることが出来ていない。背景には米国と他国を巡る貿易協議や貿易摩擦がある。
これまでの経緯では、米国が対中追加制裁関税を決めた同日に、中国が報復措置を発表し、その3、4日後に米国が新たな制裁関税措置を発表している。
米国が対中制裁追加関税の第3弾を決定したのは17日なので、そろそろトランプ大統領が追加措置を発表してくるタイミングで警戒される。
また、19日からカナダと米国は北米自由貿易協定(NAFTA)交渉を巡る協議を再開しており、日本と米国は25日に首脳会談を開く予定で、その前に通商協議も予定されている。
米中協議の進展には時間を要すると見られるが、カナダと日本の協議がある程度まとまれば、世界貿易戦争の脅威が米中貿易競争へとサイズダウンすることが見込まれ、ドルも113円に向けた機運が高まる可能性がある。

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