焦点:アマゾン、ホールフーズ買収でウォルマートに真っ向勝負

焦点:米アマゾン、ホールフーズ買収でウォルマートに勝負
 6月18日、米アマゾンが、実店舗分野で圧倒的存在感を占めるウォルマートへの対抗策を打ち出してきた。自然・有機食品小売り大手ホールフーズ・マーケットを140億ドルで買収すると発表したのだ。写真はニューヨーク市で16日撮影(2017年 ロイター/Carlo Allegri)
[シカゴ/サンフランシスコ 18日 ロイター] - 米ウォルマート・ストアーズが昨年、ジェット・ドット・コムを30億ドルで買収したのは、オンライン小売り分野でアマゾン・ドット・コムに押されっぱなしだったウォルマートが反撃ののろしを上げた重要な出来事だった。
そして今度はアマゾンが、実店舗分野で圧倒的存在感を占めるウォルマートへの対抗策を打ち出してきた。16日に自然・有機食品小売り大手ホールフーズ・マーケットを140億ドルで買収すると発表したのだ。
両社の動きは、実店舗とオンラインの間にあった従来の垣根が消えつつあり、それぞれの優位が絶対でなくなっていることを物語っている。
アマゾンのホールフーズ買収は、既に激しい価格競争が展開されている米食品小売り市場を根本からひっくり返す形にもなる。つまり同市場の収入が1月末までの年度の全売上高の56%を占めるウォルマートにとって、影響はこの上なく大きい。アマゾンとしてはホールフーズの店舗を利用し、4700店で大規模な食品小売り事業を展開するウォルマートとどのように競争していくかを学ぶことができる。
アマゾンは評判が良くないホールフーズの高価格を引き下げ、ウォルマートの顧客層を取り込むようにするだろう。
ウォルマートも備えを固めている可能性がある。食品価格戦争を見越して、ここ数カ月は値引きや生鮮品・食肉の特売、店舗改装、オンラインスーパーの拡充などに取り組んでいる。
ジェット・ドット・コム創設者で現在はウォルマートの電子商取引部門を率いているマーク・ロア氏はロイターのインタビューで、アマゾンのホールフーズ買収でウォルマートの方針が変わることはないと強調し、「われわれは攻勢を続ける」と宣言した。
ただかつてウォルマートでグローバル食品調達を監督していたオークトン・アドバイザリー・グループのロジャー・デービッドソン社長は、アマゾンのホールフーズ買収でウォルマートの実店舗事業における優位が弱まったと指摘。「この買収は気掛かりな材料だ」と述べた。
一部の業界専門家はホールフーズとウォルマートの顧客層の違いを理由に挙げて、アマゾンがウォルマートの客を奪うのは難しいとみている。それでも市場調査会社ユーロモニターの小売り部門責任者ミッシェル・グラント氏は、ホールフーズの提供商品では目立たない存在である「ホールフーズ365」を活用できるとの見方を示した。
ホールフーズ365はプライベートブランド(PB)で、他の商品よりも販売価格が安く、標的としているのは年齢が若くて価格を重視する買い手だ。アマゾンがこのPBに資金を投じるなどのてこ入れをして大きく育てれば、ウォルマートにとって大問題になるかもしれない、とグラント氏は話す。
アマゾンはホールフーズを使って未来の食品小売店の在り方を試すと予想するのは、アマゾンで実店舗戦略に携わっていたブリテン・ラッド氏だ。具体的には買い物客がカートに商品を入れた段階で自動スキャンする技術を使い、レジを廃止するのではないかという。
さらにラッド氏は「アマゾンは価格を引き下げ、ホールフーズの品ぞろえを変えて顧客層を拡大しようとする。(スーパー大手)クローガーやウォルマートはその影響を受け、顧客がアマゾンに流出する」と述べた。
(Nandita Bose、Jeffrey Dastin記者)

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