コラム:IMFのアルゼンチン支援、マクリ大統領に追い風か
Martin Langfield
[ニューヨーク 8日 ロイター BREAKINGVIEWS] - アルゼンチン政府は国際通貨基金(IMF)から500億ドルの融資を取り付けた。来年10月の大統領選で再選を目指すマクリ大統領にとって、ちょうど良い時期に追い風が吹くかもしれない。
IMFはアルゼンチンで言われなき汚名を着せられている。国民の間では、2週間で大統領が5人も入れ替わった2001年末の金融・政治危機と、それに続く屈辱的な対外デフォルト(債務不履行)の記憶と結び付いているのだ。
2015年12月に就任したマクリ大統領は金融市場の人気が高く、世界金融危機の痛手から経済を復活させ、経済運営を巡る信頼をかなり回復させた。しかし放漫な財政運営を行ったフェルナンデス前大統領の支持者など、マクリ氏の批判派は、エネルギー価格助成や公務員を削減する同氏の政策が現在の苦境を招いたと批判している。
政府はIMF融資の一部を引き出すにとどめ、残りは準備金として蓄えておく意向だ。それでも融資の利用には基礎的財政赤字の削減加速など、付帯条件がついている。基礎的財政赤字を国内総生産(GDP)に対し2018年は2.7%、19年には1.3%に抑えるという目標の実現は現実的に見える。21年までの黒字化は次期政権の仕事だ。
昨年の議会中間選挙の時期には、ちょうど成長率が上向き、マクリ大統領の与党に有利となった。来年10月の次期大統領選も景気循環の影響を受けそうだ。
IMFとの合意では、最貧層向けの社会福祉費は削減の対象外とされたため、IMF嫌いで知られる野党・正義党(ペロン党)の支持率稼ぎは幾分抑えられるかもしれない。とはいえ、国民がその時点でIMFの融資について、またしても厳しい緊縮を押し付けられたと受け止めるのではなく、景気回復のきっかけになったと歓迎してくれているかどうかは、タイミングという運に左右される。
融資に伴う反発をうまく制御していくのは、IMFにとっても容易なことではない。ただラガルド専務理事にはもっと大きな課題が待ち構えている。アルゼンチンで手こずっているようでは、ベネズエラ問題には立ち向かえない。
●背景となるニュース
・IMFは7日、アルゼンチンに対する期間3年、最大500億ドルの融資枠設定で合意した。新興国市場全般からの資金流出のあおりで、アルゼンチン通貨ペソが急落したため、マクリ政権は5月8日にIMFに支援を仰いでいた。政府は財政赤字の削減を加速すると約束した。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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