コラム:豪中銀、量的緩和へのアプローチはゆっくり
Clara Ferreira-Marques
[香港 2日 ロイター BREAKINGVIEWS] - オーストラリア準備銀行(豪中銀、RBA)は、金融政策対応の余地がまだある。これは他の中央銀行にとって羨ましいかぎりだろう。豪中銀のロウ総裁は、他の中銀が数年前から実施している資産買い入れに踏み切る前に、あと2回利下げして景気を支援できる。豪中銀がゆっくり対応する合理性は十分ある。
豪中銀は、6月以降3回利下げし、政策金利を過去最低の0.75%とした。しかし、その効果といえば、今のところ住宅価格の回復くらいだ。失業率は9月に低下したものの、10月は5.3%に上昇。雇用は過去3年で最大を落ち込みを記録し、消費者信頼感は低迷している。ロウ総裁は、債券買い入れなどの非伝統的措置は政策金利が0.25%まで下がらないと選択肢にならない、と述べている。経済は減速しているが、クラッシュはしていないことを踏まえると、ロウ総裁は時間をかけて緩和を進める余裕がある。
他の多くの中銀幹部と同様、ロウ総裁も政府にもっと景気支援に取り組んで欲しいと考えている。しかしモリソン首相の腰は重い。38億豪ドル(26億米ドル)の財政支出を迅速に実施する計画は歓迎できるが、今後18カ月に支出されるのはわずか18億豪ドル、国内総生産(GDP)の約0.1%にとどまる見込みだ。豪政府はなお、2019/2020年度の財政収支を黒字と想定している。
これまで財政面の対応が遅くても何とかなったのは、ひとつに豪中銀が景気支援に向け緩和をしていたからだ。ただ真の変化をもたらすことができるレバーをコントロールするのは政府だ。豪政府は、早ければ今月の予算中間評価で、給与引き上げという条件付きの法人税減税を提案するといった可能性がある。
豪中銀は、適切なタイミングで金融緩和しなければ、中銀の責務を放棄したことになると懸念しているかもしれない。しかし、ロウ総裁には、あまり伝統的でない措置の採用を強いられることを懸念するもっともな理由がある。中銀幹部、特にユーロ圏の中銀幹部は、資産買い入れは停止するより始める方が簡単だということに気づいた。彼らの経験をみれば、RBAは同じ道を急いで進むことに不安を覚えるだろう。
●背景となるニュース
*豪中銀は12月3日に理事会を開催する。同中銀は6月以降、3回利下げし、政策金利は現在、過去最低の0.75%。
*ロウ総裁は11月26日、量的緩和(QE)が必要になる段階には達していない、との認識を示すものの、必要となれば、流通市場で政府債を購入することになると発言。
*ロウ総裁は、QEは政策金利が0.25%の時点で検討対象となるとの認識を示す。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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