コラム:「バイデン政権」でも米巨大IT企業への圧力はやまず

コラム:「バイデン政権」でも米巨大IT企業への圧力はやまず
8月5日、バイデン前米副大統領(写真)が大統領に就任したとしても、米国の巨大IT企業は政権からの圧力に直面し続けるだろう。デラウェア州ウィルミントンで7月撮影(2020年 ロイター/Jonathan Ernst)
Gina Chon
[サンフランシスコ 5日 ロイター BREAKINGVIEWS] - バイデン前米副大統領が大統領に就任したとしても、米国の巨大IT企業は政権からの圧力に直面し続けるだろう。中国企業が運営する動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」に対するトランプ大統領の介入は、異例のやり方だ。ただ、国家安全保障上の懸念は党派を問わない。シリコンバレーにはバイデン氏への献金者が多いが、それでも両候補とも巨大IT企業に警戒感を持っていることには変わらない。違いがあるとすれば警戒する理由だ。
両候補には珍しい、こうした一致点は、トランプ氏がTikTokに関して公然とした策略に出たことで、存在がぼやけてしまった感はある。トランプ氏は、米マイクロソフトによるTikTok米国事業などの買収交渉が45日以内に成立しなければ、9月15日に同事業の運営を禁止すると圧力をかけた。
一方でTikTokについてはバイデン氏側も陣営スタッフに利用を注意喚起。特定の中国企業が安全保障上のリスクをもたらすとの考え方はトランプ氏側と同じだ。
ソーシャルメディア・プラットフォームも、両候補ともに標的にしている分野だ。ただ、動機は異なる。トランプ氏は、ツイッターなどが保守派の見解を検閲していると信じており、それを阻止するための訴訟は認められるべきだと考えている。バイデン氏側のほうは、フェイスブックとその競合他社が、誤情報の監視を十分に行っていないと危惧している。
エリザベス・ウォーレン上院議員など、民主党リベラルは反トラスト(独占禁止)の観点から巨大IT企業の解体を主張。トランプ政権もグーグルの親会社アルファベット、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、アップルの4社による反競争的な行動について調査を開始している。
しかしバイデン氏自身は、反トラストの観点をさほど重視していない。代わりに、巨大IT企業の従業員が労働組合を作りやすくし、団体交渉を行いやすくすることなど、労働者の権利に注目している。これは、例えばアマゾンの経営に悪影響を及ぼしかねない。バイデン氏はまた、配車サービス大手ウーバー・テクノロジーズやリフトの運転手など、請負労働者を従業員に分類し直し、それに伴う保障待遇などを受けられるようにしたい意向だ。
こうした考えゆえに、バイデン氏はトランプ氏よりもIT産業との対立点が少ない。同氏に対する大口献金者には、フェイスブックの共同創業者ダスティン・モスコビッチ氏やグーグルのエリック・シュミット元最高経営責任者(CEO)、ベンチャーキャピタリストのリード・ホフマン氏らが名を連ねる。アマゾンやマイクロソフトの幹部にも、主要な献金者がいる。
とはいえ、「バイデン政権」はオバマ前大統領の時代ほどシリコンバレーに友好的ではないだろう。デジタル通だったオバマ氏はIT業界、特にグーグルと近く、政権上層部の面々はその後、フェイスブック、アマゾン、ウーバーその他の企業に転じた。
バイデン氏はトランプ氏同様、巨大IT企業と対決するだろう。ただ、トランプ氏ほどあからさまな手法は取らないということだ。
●背景となるニュース
*マイクロソフト(MS)は「北京字節跳動科技(バイトダンス)」が運営するTikTokの米国事業などの買収を交渉中。トランプ大統領は3日、MSか別の米企業による買収は構わないとした上で、45日以内に成立しなければ、9月15日に運営を禁止すると述べた。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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