コラム:ブルームバーグ氏当選なら、ブルームバーグどうなる
Jennifer Saba
[サンフランシスコ 22日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 大学時代に自分は米国初のユダヤ系の大統領になるのだと冗談を口にしていたマイケル・ブルームバーグ元ニューヨーク市長は24日、ついに2020年大統領選に正式に出馬、民主党候補指名を目指すと表明した。だがそれを実現するためには、自身の名前を冠した金融情報サービスのブルームバーグをどうにかしなければならない。このまま同氏が保有し続ければ、利益相反に問われる恐れがあるからだ。
ブルームバーグ氏は、ニューヨーク市長時代にやったように会社を信託に付すことができる。トランプ大統領も大統領就任後、自らが経営していたファミリー企業トランプ・オーガニゼーションの信託移管を通じて運営の監督からは退いた。それでもブルームバーグ氏はトランプ氏について「無謀かつ非倫理的な」ふるまいだとし、「実在する脅威」になっていると異議を唱えている。だからブルームバーグ氏が有権者を納得させるには、より厳格な対応が必要になる。会社ブルームバーグを完全に売却すれば、同氏の個人的な利益が大統領の職務に悪影響を及ぼすのではないかとの疑念は払しょくされるだろう。
バートン・テイラー・インターナショナル・コンサルティングの試算では、ブルームバーグのことしの売上高は105億ドルに達し、利益率は37%となる見通し。税金と設備投資を考慮すると、EBITDA(利払い・税・償却前利益)は約53億ドルとみられ、企業価値はこの12倍と仮定すると600億ドルを超える。
そうした高いバリュエーションのため、買い手候補はおのずと限られる。プライベート・エクイティ(PE)企業は、ブラックストーンがトムソン・ロイターから金融情報サービスのリフィニティブを200億ドルで取得した事例を参照しようとしてもおかしくない。この案件は十分な買収資金を確保するために企業連合を組むことが不可欠となったが、ウォール街屈指の金融情報サービスを展開するブルームバーグが手に入るなら、やはり喜んで連合が組まれるかもしれない。
たとえばマイクロソフトが、世界中の企業向けサービスに金融情報を新たに加えることを検討するかもしれない。時価総額1兆ドルの企業なので、ブルームバーグを楽に吸収できる。その点は、親会社のアルファベットに1000億ドル強の手元資金があるグーグルも同じだ。ブルームバーグは、より多くのデータ収集に乗り出して16年にウェザーを買収したIBMと相性が良いという面もあるだろう。
最後に、ロンドン証券取引所がリフィニティブ買収の手続きを進めていることから、ライバルのインターコンチネンタル取引所(時価総額530億ドル)やCME(同740億ドル)が、ブルームバーグ争奪戦に参加することも考えられる。もっとも両者は、ブルームバーグ氏に会社を完全に手放させるほどの大金を集めるのに苦労するのではないか。
いずれにしてもブルームバーグ氏は、大統領になる夢をかなえるには、まず民主党候補の指名獲得を含めたいくつかの、より大きなハードルを越えなければならない。しかし、来年の大統領選勝利に向けて態勢を整える上では、足元でブルームバーグを誰に手渡すかを巡る周到な計画を練ることが求められる。
●背景となるニュース
*元ニューヨーク市長で金融情報サービスのブルームバーグを所有するマイケル・ブルームバーグ氏は24日、2020年大統領選に出馬すると表明。「トランプ大統領を打ち負かして米国を再建する」と宣言した。
*ブルームバーグの広報担当者は、同社は売却に動いていないと述べた。
*ロンドン証券取引所の株主は26日、金融情報サービスのリフィニティブを270億ドルで買収する計画を支持した。リフィニティブは昨年、ブラックストーンがトムソン・ロイターから取得していた。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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