コラム:米ボーイング、投資家の楽観的判断は時期尚早

コラム:米ボーイング、投資家の楽観的判断は時期尚早
 1月29日、米ボーイングは、社長兼最高経営責任者(CEO)にデービッド・カルホーン氏が就任してから初めての四半期決算を発表したが、これはという明るい材料を見つけ出すのは難しい。売上高は前年同期比37%減少し、純損益は10億ドルの赤字と、いずれもアナリストの予想以上に悪化した。写真はボーイング工場の737MAX機、2019年12月16日にワシントン州で撮影(2020年 ロイター/Lindsey Wasson)
Robert Cyran
[ニューヨーク 29日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米ボーイングは29日、社長兼最高経営責任者(CEO)にデービッド・カルホーン氏が就任してから初めての四半期決算を発表したが、これはという明るい材料を見つけ出すのは難しい。売上高は前年同期比37%減少し、純損益は10億ドルの赤字と、いずれもアナリストの予想以上に悪化した。新型旅客機737MAXの運航停止に伴うコストの想定は、当初のほぼ2倍の約190億ドルに達している。利益率の高い中型旅客機787ドリームライナーの需要も鈍化が続く。それでも株価は上昇した。投資家が最悪期は過ぎたと判断したためだ。
だがそうした考えは時期尚早と言える。カルホーン氏の前任だったデニス・ミューレンバーグ氏は、737MAXを巡る規制当局の対応と、同機の改良に向けた取り組みの双方で、再三にわたって間違った選択をしてきた。その結果辞任を余儀なくされたのだ。737MAXが2度の墜落事故を起こした後、米連邦航空局(FAA)に運航を停止されてからもうすぐ1年を迎える。ボーイングは、年央には運航を再開できるとみている。
恐らくカルホーン氏はより慎重な姿勢で望んでいる。だがなお多大なリスクが存在する。FAAはまだ商業飛行の再開を認めていないし、諸外国の規制当局は運航再開でそれぞれ独自の見解を示したがるだろう。運航再開が一段と遅れれば、納入を待っている航空会社への補償も膨らみかねない。最終的に再開が承認されても、航空会社からの受注が減るかもしれない。その上、利用者が搭乗することへの心理的な抵抗感は高まる。
737MAXは、ボーイングの収益源だ。そのため運航停止によって同社の財務基盤は弱体化し続けている。第4・四半期に27億ドルを費消したほか、配当として10億ドル強を支払った。こうした「流血」に対応するため、借金を重ねている。昨年末の債務額は270億ドル超で、さらに銀行団と120億ドルを借り入れる交渉に入った。
投資家は今のところ、ボーイングのバランスシート悪化に概して目を向けず、将来事態が良くなる可能性にばかり注目している。彼らの思惑では、航空機需要は今後伸びるし、競争相手もエアバスに限定される。その結果、ボーイングは評価をガタ落ちさせた深刻な危機に陥っているにもかかわらず、時価総額が過去1年でおよそ10%、200億ドル程度しか目減りしていない。しかし737MAXの運航再開までに、ボーイングには依然として取り組むべき宿題が残っているのではないだろうか。 
●背景となるニュース
*ボーイングが29日発表した第4・四半期の売上高は前年同期比37%減の179億ドル、純損益は10億ドル(1株当たり1.79ドル)の赤字だった。
*ボーイングは、2度の墜落事故を起こして運航停止となっている新型旅客機737MAXに関連して幾つかの費用が発生した。生産中止と再開に絡む費用は40億ドルで、主に今年の負担となる。さらに顧客への補償などに伴って税引き前で26億ドル、生産改良などでも別に26億ドルを計上する。
*昨年10月、ボーイングは中型旅客機787ドリームライナーも今年終盤から生産機数を毎月14機から12機に減らすと発表したが、今回21年初めから10機にペースを落とし、23年に12機に戻すと説明した。
*カルホーンCEOは22日、「何か劇的な変化が起きない限り」、無配や減配はしないと表明。また737MAXの生産再開時期について、運航再開が予想される年央よりも前になるとの見方を示した。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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