アングル:海外リスク後退で現状維持、日銀「次の一手」当面温存か

アングル:海外リスク後退で現状維持、日銀「次の一手」当面温存か
日銀は18─19日の金融政策決定会合で、現行の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)付き量的・質的金融緩和の継続を決めた。米中貿易協議の部分合意や英国総選挙の結果を受け、最も警戒していた海外リスクが一時に比べ後退したためだ。黒田東彦総裁は「依然としてリスクは高い」として緩和方向の姿勢を崩さなかったが、日銀内には金融市場などの動向を見極めながら、当面、次の一手は温存すべきとの声が多い。写真は2016年9月、東京の日銀本店(2019年 ロイター/Toru Hanai)
志田義寧
[東京 19日 ロイター] - 日銀は18─19日の金融政策決定会合で、現行の長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)付き量的・質的金融緩和の継続を決めた。米中貿易協議の部分合意や英国総選挙の結果を受け、最も警戒していた海外リスクが一時に比べ後退したためだ。黒田東彦総裁は「依然としてリスクは高い」として緩和方向の姿勢を崩さなかったが、日銀内には金融市場などの動向を見極めながら、当面、次の一手は温存すべきとの声が多い。
黒田総裁は19日の記者会見で、当面の金融政策運営について、海外リスクが若干低下したのは事実だが、依然として高い水準にあるとして「引き続き緩和方向を意識したスタンスを維持する必要がある」との認識を示した。
ただ「低金利環境が続く下での金融機関への影響も十分注視していかなければならない」とも強調した。
最近の日銀幹部の発言は、追加緩和は可能というファイティングポーズと、副作用にも配慮という文言がセットになっているため、市場ではできればやりやくないのだろうと見通す声が広がっている。
実際、この日の会見でも副作用やコストに関する発言が少なくなかった。黒田総裁はマイナス金利深掘りの可能性について「金融政策として必要な事態になればあり得る」と従来のスタンスを繰り返しつつ、副作用についても言及。コストへの配慮は「今後さらに必要性が高まっていく可能性がある」と警戒感を示した。
金融緩和の副作用のひとつにイールドカーブのフラット化がある。日銀は超長期ゾーンの金利が下がりすぎると、保険や年金の運用利回りの低下などを通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性があると警戒している。黒田総裁は会見で「もうちょっとスティープになっても良いのではないかと思っている」と本音を漏らした。
大和証券チーフマーケットエコノミストの岩下真理氏は「にっこりと笑顔で発言したのはとても印象的だった。この根底には、世界経済を今後注視していかなければならないとしつつも、見通しに対して明るい兆しがあると思っていることがあるのではないか」との見方を示した。
市場では、政府が事業規模26兆円の経済対策を打ち出したことで、政府との一体感を出すために日銀も何らかの手を出してくるのではないかとの見方が一部にあった。しかし結果は現状維持。黒田総裁は「イールドカーブコントロールで大幅な金融緩和を継続しているので、ポリシーミックスとしても大きな効果があるのではないか」と語った。
ある日銀幹部は「いまは強力な金融緩和を継続しており、まだ国債など積み増している。現状維持ということではない」と強調した。

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