焦点:景況感大幅に悪化、日銀短観で中国依存が浮き彫りに

焦点:景況感大幅に悪化、日銀短観で中国依存が浮き彫りに
日銀が発表した3月短観の景況感悪化は、新型コロナウイルスの感染拡大による中国の生産への打撃やインバウンド客の激減が主因となった。写真は3月14日、大阪市の道頓堀で撮影(2020年 ロイター/Edgard Garrido)
中川泉
[東京 1日 ロイター] - 日銀が発表した3月短観の景況感悪化は、新型コロナウイルスの感染拡大による中国の生産への打撃やインバウンド客の激減が主因となった。日本経済の中国依存度の高さが浮き彫りとなり、政府は危機感を強めているが、企業の視点からみると、サプライチェーンの見直しはなかなか進みそうにない。
<中国悪化の影響色濃く、現状の実態はさらに悪化>
今回の短観は、予想通り景況感(DI)が大幅悪化となった。大企業製造業では13年3月調査以来のマイナス転換となり、非製造業も同じく13年3月以来の低水準に落ち込んだ。
鉄鋼では景況感が13ポイント悪化、生産用機械では15ポイント悪化するなど、中国での需要悪化が直撃した業種では軒並み2ケタの悪化幅となった。宿泊・飲食サービスは70ポイントの悪化となり、中国人観光客の激減を物語る。日本経済の中国依存が大きく表れたかたちだ。
ただ、実際には、景況感も事業計画の悪化も事前予測よりマイルドなものにとどまった。
これは、調査回答の基準日が3月11日で、それまでに7割が回答していたことにもよる。その後の欧米での感染急拡大や月末にかけての東京でのロックダウンへの警戒など、「現状での企業環境悪化が十分反映しきれていない」(野村証券の三輪卓チーフエコノミスト)とみられいてる。大和総研シニアエコノミスト、小林俊介氏も「事業環境の不透明感が強すぎて、従来から予定していた投資や売り上げ見通しを修正するに至らなかったようだ」とみている。
日銀調査統計局も同様に「設備投資は堅調だが、新型コロナウイルスの影響がどこまで織り込まれているか、6月短観も併せて見ていく必要がある」(永幡崇・経済統計課長)と指摘している。
現時点あるいは今後も含めて企業への打撃は一段と大きくなっていく可能性が否定できない状況だ。
<中国依存の経済構造、見直し難しく>
明るい材料がないわけではない。感染拡大は今や欧米が中心であり、中国はすでにピークを越え、生産体制も緩やかながら回復に向かっている。
実は「日本経済にとっては欧米での需要蒸発よりも、中国での需要・供給体制のインパクトの方が大きい」と野村証券の三輪氏は指摘する。短観DIを見ても、中国からの部品調達の停滞で打撃を受けてきた電機は中国での生産回復を反映して先行きへの見方が改善している。
裏を返せば、中国経済の回復が進むことで、日本企業のサプライチェーンに中国がなくてはならない存在であり続けることになる。政府は新型コロナウイルス発生で明らかになった中国への依存が日本の経済安全保障にとって問題になるとの視点から、その見直しに動き始めている。
3月5日の未来投資会議では日本経済がいかに中国依存度が高いかを議論。中間財の輸出入依存度が2割を超えており、主要国と比べても群を抜いていることを課題に挙げている。
また本日発足した国家安全保障局の経済班では、新型コロナウィルスの影響による中国依存のサプライチェーンへの対応も扱うことになった。
一方で企業サイドではこうした意識はまだ薄く、中国から他地域への事業移管はそう簡単には進みそうにない。ロイター3月調査ではサプライチェーンへの影響を受けた企業のうち、その見直しを実施・検討している企業は47%と半数程度にとどまる。
そうした企業でも「調達国を中国から日本、台湾、東南アジアに変更しても構成部品が中国からの調達品であることも多く、思うように代替品を調達できない」(機械)など、なかなか代替先が見つけられない状況だ。
また輸出先としても中国を凌ぐ巨大市場はなく、現地への進出は欠かせない。自動車産業では販売台数の2割弱を、電子部品の3割強を中国向けが占める。国内市場の縮小をカバーするためにも必要不可欠な市場であり、代替となる他国市場の確保は困難な状況だ。

編集:石田仁志

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