コラム:アマゾン「受注敗北」に見る、トランプ新手法の威力

コラム:アマゾン「受注敗北」に見る、トランプ新手法の威力
10月28日、大手ハイテク企業のオーナーにとって、トランプ政権に目を付けられる以上に困ったことは、政権の「寵愛」が他の企業に向かうことかもしれない。写真はアマゾンのロゴ。仏ボーブで9月撮影(2019年 ロイター/Pascal Rossignol)
Gina Chon
[サンフランシスコ 28日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 大手ハイテク企業のオーナーにとって、トランプ政権に目を付けられる以上に困ったことは、政権の「寵愛」が他の企業に向かうことかもしれない。アマゾン・ドット・コムは、米国防総省からの100億ドル規模の契約獲得でマイクロソフトに敗れた。これはトランプ大統領が介入をちらつかせていた案件だ。
トランプ氏の怒りだけであれば限界があるが、政府発注の入札が絡むと、競合他社がひいきにされるリスクも浮上する。 
トランプ政権下では、あらゆる企業の最高経営責任者(CEO)が細心の注意を強いられてきた。大統領がオンライン・プラットフォームの「反保守バイアス」に批判を強めているため、とりわけシリコンバレー企業のCEOは弱い立場だ。アマゾンの場合、ベゾスCEOがトランプ氏への「口撃」の常連であるワシントン・ポスト紙を所有していることで、目の敵にされている。 
大統領が企業に被害を及ぼそうとしても限界がある。大統領の意向に応える規制当局は、アマゾンなど大手IT企業の反トラスト調査に着手。少なくとも事業の制限につながる結果となる可能性がある。だが、最終的な結論が出るのは数年先だ。 
今回の国防総省の契約の一件は、トランプ氏がどうすれば大きな影響力を行使できるかを見せつけた。政府による調達は大きなビジネスだ。2020会計年度におけるIT関連歳出は、900億ドル近くに上る可能性がある。
アマゾンは国防総省の「JEDI(ジェダイ)」と呼ばれるクラウドサービス事業受注の有力候補だったが、トランプ氏はこの夏、同社に対するライバル企業からの不満に対処するため、干渉する可能性を示していた。 
マイクロソフトへの事業発注は無難な選択肢だったかもしれないが、疑問も生じさせている。マティス前国防長官の側近による近著では、トランプ氏がマティス氏に対し、JEDI契約から「アマゾンを閉め出せ」と告げたことが暴露されている。 
政府事業の受注を狙う他の企業にも、今回の件は警戒感をもたらした。メディアを所有するIT企業経営者は、特に影響を受けやすい。例えば、トランプ氏はタイム誌の熱心な読者で、同誌を共同所有しているセールスフォースのマーク・ベニオフ共同CEOは、政府機関にもサービスを提供している。大統領が顧客でもある時、大統領を敵に回すとリスクはさらに高くなる。 
●背景となるニュース
*米国防総省は25日、100億ドルのクラウドサービス事業契約をマイクロソフトが獲得したと発表した。同社はアマゾンを破った。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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