コラム:バイデン氏復活と金利低下の共通項、米国の潮流を読む
Anna Szymanski
[ニューヨーク 4日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 3日は金融市場と米政治情勢でそれぞれ注目すべき現象が見られた。米10年国債利回り(長期金利)が過去最低を記録し、野党・民主党の大統領候補指名争いでバイデン前副大統領が猛烈に勢いを回復したのだ。この2つは、間接的に結び付いているのかもしれない。つまりバイデン氏の躍進は、投資家と同じように有権者が不確実な時代に安全を求めていることを証明している。米国でも新型コロナウイルスの感染拡大が広がっている現状を思えば、ごく当たり前の話だが、トランプ大統領にとってはマイナス材料といえる。
「バイデン株」は、まるで10年債の価格のように最近になって急騰している。先週時点では、バーニー・サンダース上院議員が民主党大統領候補指名に必要な代議員を獲得する確率がほぼ50%まで高まっていた。ところが14州の予備選が集中する3日のスーパーチューズデーで情勢が変わり、バイデン氏が少なくとも9つの州で勝利した。
では一体何が起こったのだろうか。まずバイデン氏は、同じ中道派のピート・ブティジェッジ前サウスベンド市長とエイミー・クロブシャー上院議員の選挙戦撤退が追い風になった。同時にマイケル・ブルームバーグ前ニューヨーク市長も有権者から拒絶され、海外領土でしか勝てなかった。有権者は、力量がよく知られているバイデン氏が好ましいと考えたように見受けられる。
バイデン氏に多くの支持が寄せられたことからは、安全志向の強まりも読み取れる。サンダース氏ら左派候補と異なり、バイデン氏は国民皆医療保険の導入を求めておらず、富裕層への増税を提唱しながらも、懲罰的な課税を打ち出してはいない。中国に対する姿勢はそれほど強硬ではなく、学生ローンの負担軽減は提案しているものの、帳消しにする考えもない。さらにバイデン氏なら、米国の金融資本主義に与える脅威は乏しい。トランプ氏ともほとんどの面で対照的であるばかりか、既存のシステムを次々に打ち壊していくような性格とは程遠い。
もちろんバイデン氏の急浮上を、単に新型ウイルスによるパニックのためだと片付けることはできない。だが新たに出現したリスク回避ムードは、バイデン氏に有利となるはずだ。ブルームバーグ氏が選挙活動を停止したので、彼の莫大な資金と専門知識、一流スタッフの支援を得れば、バイデン氏の陣営はこの流れをうまく活用することが可能だ。そうなるとトランプ氏は、富豪の資金力を味方につけ、中央政界の表裏に精通し、なおかつかなり無難な政策を提示する政治家と対決する形になる。世界的に不安感が高まっている中で、バイデン氏が兼ね備えるこれらの要素は選挙戦において有効な武器になり得る。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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