コラム:中国「融資平台」が直面する安易な永久債発行のつけ

コラム:中国の融資平台が直面する安易な永久債発行のつけ
 9月23日、中国で永久債の早期償還を初めて見送った地方政府の傘下企業が出現し、波紋が広がっている。写真は100元紙幣。2016年3月30日、北京で撮影(2019年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
Christopher Beddor
[香港 23日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国で永久債の早期償還を初めて見送った地方政府の傘下企業が出現し、波紋が広がっている。地方政府のための資金調達と投資を手掛ける「融資平台(LGFV)」と呼ばれる企業は、中央政府から命令された債務圧縮目標の達成に向けた一助として、資本性証券の性格を持つ永久債を積極的に活用してきた。しかし約750億ドル相当が事実上の償還期限を迎えた今、永久債発行という安易な手段を選択した代償が高くつくことが判明しそうだ。
今月の初回コール日に、15億元(2億1200万ドル)の永久債の償還をしないと表明したのは、吉林省のLGFVだった。永久債には当然正式な償還期限はなく、だからこそバランスシート上でしばしば株式と同等の扱いを受ける。ただできるだけ早く償還しないと、利払い負担がどんどん大きくなるので、一般的には初回コール日の償還が想定されている。償還を見送った吉林省のLGFVの場合、起債時におよそ4.6%だった表面利率を今後8%前後に設定しなければならない。このため償還見送りは、何らかの問題が生じているサインだとみなされがちだ。
中国では、永久債の90%は国や地方の資本が入っている公的企業によって発行されている。当局から来年末までに、資産に対する債務比率を2017年比で2%ポイント減らせと迫れている公的企業が開始したのが永久債発行で、早期償還のオプションと高い表面利率を通じて買い手を取り込んだ例も多かった。つまり従来の社債よりも発行コストはかさみ、特に早期償還ができないと、借り手の痛みは増大する恐れが出てくる。それでも公的企業の経営者は、純粋な債務削減よりもそうしたリスクを背負う道を好んだようだ。
中央政府当局はこの永久債のからくりに気づき、財政省は今年になってより厳格な指針を発表している。とはいえ永久債全体ではS&Pグローバル・レーティングの推計で約1兆2000億元に上るだけに、当局としても新ルールをあまりにも厳しく適用することに消極的になっているように見受けられる。
この姿勢は、公的企業の中でも財務面で最も不安定なグループに属するLGFVに対してとりわけ当てはまる。S&Pによると、非金融セクターの永久債発行残高の40%近くを占めるのはLGFVだ。
そしてS&Pは7月、今年と来年に5330億元相当の永久債が初回コール日を迎えるとの試算結果を示した。折悪しく地方政府の財政は減税と景気減速で圧迫されている一方、彼らは景気を刺激する重要なエンジンでもある。こうした状況は、当局にとって延々と続く頭痛の種になりかねない。
●背景となるニュース
*IFRが10日伝えたところでは、吉林省のLGFVは28日が初回コール日となっている永久債を償還しない。LGFVで償還見送りは初めてとなる。これに伴って3年物国債に対する上乗せ利回り幅は当初より300ベーシスポイント(bP)上がり、表面利率は約8%に達する。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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