コラム:トランプ政権の緩い燃費規制、自動車各社が反旗

コラム:トランプ政権の緩い燃費基準、自動車各社が反旗
 米フォードなど自動車メーカーは、トランプ政権が提案しているカリフォルニア州よりも緩い燃費規制に反対するつもりだ。写真はベトナムにあるフォードの工場。4月12日、ハイズオン州で撮影(2019年 ロイター/Kham)
Antony Currie
[ニューヨーク 23日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 自動車メーカー各社は、3720億ドルもの大金がかかっている以上、トランプ米大統領の意向にあえて逆らうつもりだ。この金額は、カリフォルニアと他の14州が定めた、トランプ氏の要望よりも厳しい燃費基準をメーカーが達成しなかった場合に、失われる恐れがある年間売上高に相当する。
トランプ氏は21日、フォード・モーターに対して根拠のない批判を浴びせた。フォードが最近、BMW、ホンダ<7267.T>、フォルクスワーゲン(VW)とともに、カリフォルニア州が妥協案として提示した燃費基準の達成を目指すことに合意したためだ。だが金銭的な面では、よりクリーンな車を追求するのが妥当であることがはっきりしている。
ホワイトハウスは、いくつかのレベルで燃費規制の緩和に動いている。1つは2025年までにガロン当たりの走行距離を27%伸ばすことを義務付けたオバマ政権の燃費基準の撤回で、もう1つはカリフォルニア州などから独自の燃費基準を策定する権利を奪うことだ。
トランプ氏は、同州の厳格な基準はメーカーを「商売上がったり」にしてしまうと言い続けてきた。
トランプ氏の主張は、従来ほど安全でも高性能でもない車に3000ドルも追加費用をかけて製造するのはメーカーの弱味になるという内容だ。内燃機関の自動車にとって、こうした理屈はまったく当てはまらない。燃費基準の変更によって、ガソリン代は平均21%減るだろう。電気自動車(EV)は今後普及するとともに当然価格が下がるが、現時点では割高だ。
ただ、より高い燃費基準を満たす車を製造することは、メーカーが収益を確保する上で正しい道であるのは間違いない。全米自動車ディーラー協会によると、独自の燃費基準を持つ州では毎年、新車購入に1兆ドルが支出されている。そこでもしホワイトハウスの緩い燃費基準に従えば、これらの州の市場から排除されるか、2つの基準にそれぞれ対応する余計なコストがかかる製造工程の導入を強いられる。
また、考慮が必要なのは米国の規制だけではない。多くの欧州諸国、そして世界最大の市場である中国もまた、燃費基準の厳格化を進めつつある。
だからこそ、カリフォルニア州との合意には加わらなかったゼネラル・モーターズ(GM)やトヨタ自動車<7203.T>など他の主要メーカーでさえ、カリフォルニア州も受け入れられるような全国的な基準を打ち出してほしいとトランプ氏に要請している。
米大統領はそれなりの政治的影響力を持っているが、市場の力には勝てない場合もある。
●背景となるニュース
*トランプ大統領は、カリフォルニア州が提案して他の14州も採用した燃費基準を達成しようとしているフォード・モーターについて「商売上がったり」になる危険を冒していると批判した。
*トランプ氏は21日、カリフォルニア州などの基準は割高で安全性と性能が劣る車を生み出すとツイッターでつぶやいた。
*フォードとBMW、ホンダ、フォルクスワーゲンの4社は7月25日、カリフォルニア州が妥協案として示した2022─26年に排ガスを3.7%減らすという目標の達成を目指すことに合意した。同州は当初、25年までに4.7%の削減を求めていた。
*ホワイトハウスはカリフォルニア州が独自に燃費基準を策定する権利を奪いたい考えで、オバマ前政権が導入した燃費基準の引き下げにも取り組んでいる。
(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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